離婚時の年金分割は、おいしい話か? 専業主婦が離婚したら夫の年金からどのくらいもらえる?
熟年離婚が増えています。厚生労働省「人口動態統計月報年計」(2022年)によると、離婚総数に占める同居期間20年以上の人の離婚割合は1985年時点で約12.3%でしたが、2022年時点の割合は、約21.8%に増加しています。 離婚するときには、夫婦の資産を分配する財産分与を行います。厚生年金も財産分与の対象となり、夫婦で分け合うことができます。これを「年金分割」といいます。どのくらいもらえる、または渡す必要があるのでしょうか。本記事で見ていきましょう。
離婚時の年金分割は2種類ある
年金分割には、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。 合意分割は、年金を夫婦の合意によって分割する制度です。分割対象期間は、厚生年金に加入している全ての婚姻期間です。夫婦合わせた厚生年金記録の合計を、当事者間の合意に基づき、最大で50%ずつ按分を行うことになります。 例えば、夫が70%、妻が30%だった場合、夫も妻も50%ずつまで分割できることになり、妻は50%を超えて分割は受けられません。 また、厚生年金保険料の納付実績が多いほうから少ないほうへの分割なので、妻のほうが多ければ妻の年金を夫に分割することになります。なお、もし、離婚した夫婦で合意ができない場合は、家庭裁判所の審判等で、最大50%ずつになるよう、分割割合が決まることになります。 一方、3号分割は、夫婦の合意がなくても、第3号被保険者だった期間の厚生年金記録の50%を分割できる制度です。 第3号被保険者は厚生年金に加入していないので、その間の年金はゼロになりますが、厚生年金被保険者である配偶者の厚生年金記録の50%が分割されることになります。手続きをすれば強制的に50%ずつに分割されることになり、合意分割のように離婚した夫婦の合意は必要ありません。 また、3号分割で分割できる記録は、制度がスタートした2008年4月以後のもののみです。婚姻期間がそれ以前からある場合は、分けてもらう年金額が少なくなってしまいます。 3号分割と合意分割は両方とも請求できます。2008年4月までは合意分割、2008年4月以降は3号分割とすることも可能です。 請求期限は離婚翌日から2年以内です。特に、合意分割の場合は夫婦で一緒に年金事務所に行くか、合意を証明する書面(公正証書や年金分割の合意書など)を提出する必要があるので、早めに手続きしましょう。 また、自身の生年月日に応じた受給年齢に達しなければ、年金は受給できません。なお、同じ年金制度でも、iDeCoや企業型DC(企業型確定拠出年金)は年金分割の対象外です。