民主党は再生できるか? キー・パーソンは福山政調会長 ── 中北浩爾(政治学者)
民主党は16日、海江田万里代表、枝野幸男幹事長ほか民主党新執行部人事を発表した。新執行部は民主党を再生できるのか。『民主党政権 失敗の検証』の著書がある中北浩爾(なかきた・こうじ)教授に聞いた。 ---------- 政権の座を失って、やがて2年になりますが、民主党に向けられる国民の視線は、依然として厳しいものがあります。各社の世論調査をみても、支持率が5%程度で低空飛行を続けています。特にネット上では、“オワコン”扱いのようです。こう書いている私も、民主党の再生は容易ではないと考えてきました。それは、民主党が深刻なジレンマを抱えているからです。 民主党が有権者の支持を再び集めるためには、何よりも自民党との違いを示して、存在価値をアピールしなければなりません。浮動票を獲得するよりも前に、まずコアな支持者を固める。政権から転落した直後の新たな綱領の制定は、その第一歩になるはずでした。しかし、一強多弱といわれる状況のもと、国政選挙で勝つためには、野党再編、少なくとも選挙協力が欠かせません。リベラル色を強めて安倍政権に対峙するのか。それとも保守に傾斜して、橋下維新などと手を組むのか。党内の路線対立で身動きが取れないでいたのが、これまでの海江田執行部でした。 「忍」の一文字で耐えてきた海江田代表は、初めて有効な手を打ちました。9月16日の党役員人事で、岡田克也代表代行、枝野幸男幹事長、福山哲郎政調会長らを決めたことです。執行部から距離をとっていた「6人衆」のうち岡田・枝野両氏を起用し、党内の結束を固める一方、リベラル色が強く発信力がある枝野―福山ラインを作り上げ、臨時国会を前に安倍政権に対抗する態勢を整えたのです。野党のためか内閣改造・自民党役員人事に比べてマス・メディアの注目度は高くありませんが、諦めムード一色だった民主党の内部には、前向きな空気も流れ始めているようです。 もう一つ注目したいのは、他の野党の混迷です。9月21日、日本維新の会と結いの党がいよいよ合併しました。しかし、党名をめぐって破談寸前まで至ったことなどをみて、「維新の党」に期待する向きは少ないでしょう。ましてや、みんなの党の内紛は、末期症状というほかありません。次世代の党は、安倍自民党に秋波を送ることに熱心です。自民党に対抗できるのは、野党第一党でもある民主党しかないことが明らかになりつつあります。結果として、民主党の野党内でのバーゲニング・パワーは高まり、党内の求心力も強まるでしょう。