「ゆくりなく」の意味を知っていますか?
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(12月7日放送)に評論家の宮崎哲弥が出演。『教養としての上級語彙』について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。12月4日(月)~12月8日(金)のゲストは評論家の宮崎哲弥。4日目は、好みの語彙について― 黒木)宮崎さんが出版された『教養としての上級語彙 知的人生のための500語』(新潮選書)の500語は、1万語を超える語彙のなかから選ばれたということですが、なかでも宮崎さんが好きな日本語があるのですよね? 宮崎)自分の好き嫌いを言葉に対して押し付けるのはどうかと思いますが、「ゆくりなく」という言葉が好きですね。「思いがけなく」というような感じの意味です。また、「端無(はしな)くも」という言葉もあります。 黒木)「端無くも」。 宮崎)なかなか使われなくなっている言葉ですが、私はこういう言葉を復活させたいと思いますね。 黒木)昔々に読んでいた本に書いてあったような記憶があります。 宮崎)この『教養としての上級語彙 知的人生のための500語』は普通の語彙集とは違い、「初見の用例」と名付けたのですが、本文のなかにいろいろと埋め込まれているのです。そのあとに辞書的な定義がくる。そして、近現代的な文学から選んできた用例が書かれているという構成です。なぜ「初見の用例」を考えたのかと言うと、私たちが普通に新しい言葉に出会うときの状況を再現したかったのです。 黒木)小説などを読んでいて。 宮崎)そこで読者は「あ、この言葉は知らない」と、「ふっ」と考えてしまうでしょう? できれば、そこで「これはどういう言葉なのだろう?」と推測して欲しいのです。そのあとに出ている辞書的な定義を見て、「こういうことだったのか。自分は間違っていたな」とか、あるいは「自分の思っていた通りだった」などと思う。そうすると記憶に残るではないですか。そういう記憶のフックになることを考えたのです。 黒木)知っている語彙があると、「あ、知ってる」と嬉しくなります。宮崎さん的に言うと「ボキャ貧」の逆で、「ボキャ富」ですか? 宮崎)「ボキャ豊」や「ボキャ富」と言います。