札幌市北区で昨年末に完成したタワーマンション。夜でも部屋の明かりはまばらだ

　札幌中心部の大型再開発の象徴で、2023年に完成したタワーマンション2棟に住民票を置く世帯が、今年7月時点で総戸数の3割余りにとどまっている。道内外の富裕層が投資用などで買った物件が多いためとみられる。既に転売例もあり、行政も関わった再開発にもかかわらず、にぎわい創出や消費拡大を促す効果は限られているのが実情。物件価格は今後も上昇が見込まれ、多くの地元住民にとって「高額タワマンは縁遠い」という状態は続きそうだ。 　2棟は、JR札幌駅に近接する北区北8西1で昨年12月に完成した道内最高層の48階建てと、狸小路商店街と札幌駅前通に面した中央区南2西3のサンデパートビル跡地で同年4月に完成した物件。札幌では最注目の再開発マンションで、価格が1億円以上の「億ション」住戸も多く、5億円も1戸あった。いずれも分譲を終えている。 　札幌市建築指導部によると、2棟はそれぞれの街区内で唯一の住宅だ。街区別の住民基本台帳に基づく世帯数と、両マンションの総戸数を比べると、北8西1のタワマンは624戸に対し、7月時点の街区世帯数は192世帯だった。戸数に対する比率は30.8％。南2西3はタワマンの総戸数133戸に対して街区世帯数は49世帯で、戸数比は36.8％だった。 　同様に街区内で唯一の住宅として21年11月に完成した204戸が入るタワマン（中央区北3東11）は、翌年7月時点の世帯数は170世帯。戸数比で83.3％に上っていた。今回の都心2物件も、手続きを済ませていない居住者がいる可能性はあるとはいえ、住民登録をしている割合の低さは際立つ。 　実際、富裕層には両物件の立地の良さや希少性が魅力に映っていた。北8西1のタワマンに2戸を持つ道北の経営者は「親族もいる札幌の一等地なので投資用に買った」と説明。1戸を保有する東京の経営者は「東京のマンション価格は高すぎる。札幌はまだ伸び代が見込める」とみる。このタワマンで暮らす男性は「建物内は本当に静か。居住者が少ないのは間違いない」と話す。値上がり益を見込んだ転売は、既に始まっている。札幌の不動産関係者は「分譲価格に数千万円上乗せして販売中の部屋もあり、成約事例も出始めた。セカンドハウス需要も根強い」と明かす。