『アンチヒーロー』最終回は「法廷シーンが38分38秒」 飯田和孝Pが明かす
――複数の事件が最終的に繋がっていくという部分では、難しさなどもあったのではないでしょうか? 1つひとつの事件が全部繋がってくると『それって、もっと前から気づいていたでしょ?』という視聴者からのツッコミも出てくると思うんです。例えば、第9話でボツリヌストキシンの検査結果の改ざんに辿り着くところは、それまで志水が映った動画を探すことに必死になっていた明墨が、桃瀬の日記と手紙、そして赤峰と紫ノ宮の成長があってこそ気づくことができたこと。桃瀬の母からもらった資料に目を通したけど改ざんの余地は疑わず、だけど12年経ってそこにようやく気がつくことができたという部分を表現する難しさを感じながら、最大限注意を払って作りました。 ――全話を通して、北村さん演じる赤峰の成長と変化についてどのように捉えていますか? 正直、僕らが脚本を作っている段階では北村くんがここまで演じてくれると想像できていませんでした。実は、長谷川さん主演の『鈴木先生』の生徒役に北村くんがいたと、キャスティングした後に思い出したのですが、この作品では「北村匠海という俳優が赤峰柊斗をどう作っていくか」というプランニングが大きく影響しました。本当に見事で、僕らが想像して脚本に描いていたものの何十倍にもパワーアップした赤峰にしてくれたと実感しています。 ――最終回の見どころを改めて教えてください。 『アンチヒーロー』は“父親が犯罪者に仕立て上げられたことで家族を奪われてしまった娘の思いを主人公が救う物語だ”と、企画書の表紙に書いています。このドラマの1つの目的でもあった、志水の冤罪を晴らせるのかは注目していただきたいです。個人的な話ですが、2020年に子どもが生まれて、そこから“親子”というものに対する感じ方も変わっていって。奇しくも父の日に放送される最終回は、志水と紗耶だけでなく倉田功(藤木直人)と紫ノ宮、伊達原と娘・結奈(十文字陽菜)と、“父と子の姿”も描かれているので、その部分にもぜひ注目していただけたら。あとは緋山がどうなるのか、ですね。最終話で第1話冒頭の明墨のセリフとリンクしているシーンは、僕がこのドラマで言いたかったことでもあるんです。例えば会社でハラスメントしたという噂が立てばどこの部署に行ってもその噂がつきまとう。それって、生きていく上でいくら反省しても絶対に払拭できないことだと思います。「反省したら次の一歩を踏み出せるよ」というストーリーが多いと思うのですが、そうではなく世の中の悲しい現実から逃げずに緋山の人生を描きたかったので、お気に入りのシーンです。