【MotoGP】タイヤサプライヤーのミシュラン、透明性向上が急務に? パフォーマンス落差でタイトル“盗まれた”と批判受ける中最終戦へ
■ミシュランは“調査中”
ただミシュラン側はまだこの件については口を閉ざしており、むしろカタールGPでラストラップにエネア・バスティアニーニ(ドゥカティ)の手でレースラップレコードが記録されたことを指摘している。 「これはミシュランタイヤのパフォーマンスが一貫していることを示すものだ」 ミシュランのMotoGP責任者であるピエロ・タラマッソはそう語っている。 「我々は情報を分析中だ。現時点で言えることは、彼(マルティン)のタイヤは製造後直接ここへ運ばれたということだ。そして予熱も、レース以前に使われたこともなかった」 タラマッソが言及している予熱(pre-heated)とは、現在ミシュランが採用しているタイヤの利用法だ。チームに手渡され、ヒーターによって温められたもののマシンには取り付けらなかったタイヤは、日曜日に返却される。そしてそのタイヤの再利用を行なっているのだ。 ミシュランタイヤのパフォーマンスの上下について、6度のMotoGP王者であるマルク・マルケス(レプソル・ホンダ)は、エスパルガロやマルティン、バニャイヤらと見解を概ね同じくしている。ただ彼ははるかに外交的な言葉で話しており、さらにタイヤが”良すぎる”ことによって、少し悪くなっただけで目立ってしまっているとも付け加えた。 「何が起きているかといえば、タイヤが上手く機能しすぎているんだと思う。一度少しでも悪くなると、とても目立ってしまうんだ。それが問題だ。全部がもう少し悪ければ、僕らは気が付かなかっただろう」 なおミシュランが2016年からタイヤサプライヤーを務めるようになって以来、ほぼすべてのコースでレコードタイムが更新されている。 そうした記録は称賛に値するものだろう。しかし今回のカタールGPのようにタイトル争いを繰り広げるふたりがタイヤへの不信感を表明するような出来事は、ミシュランだけではなくチャンピオンシップの信頼性を傷つける可能性がある。 あるMotoGPチームのエンジニアは、タイヤの透明性に関してこう語っている。 「バイクの外部サプライヤーから供給を受ける部分、たとえばサスペンションなんか、そこに何かが起これば、分解して確認できる。しかしタイヤは我々が知っていることといえば黒くて固く、丸いということだけで、タイヤには信じなければならない、コードの描かれたステッカーがあるだけだ」 「チームが苦情を出してもミシュランの返答はコンパウンドの製造時のコンディションには多少の変動がありうる、というモノだ。そして最初の10ユニットを破棄する安全策を講じているとはいえ、あるタイヤと別のタイヤでは違いがある可能性はあるという」 エンジニアの語るミシュランの返答通り、カタールGPで発生したパフォーマンスの落差も製造時の影響範囲なのかどうか、それとも問題が発生していたのか、それは現時点では分からない。しかし”タイヤでタイトル争いが決まった”と見られることを避けるために、ミシュランが採れる最善の戦略は、今シーズンが終了する前に透明性を高めることだというのは、明らかだろう。
Oriol Puigdemont