【Bray me インタビュー】アルバムとしてのベストのかたちがこの14曲だった
新曲の他に代表曲も収録している初のフルアルバム『DUH』は、Bray meの魅力をさまざまなかたちで示す。力強いバンドサウンドで多彩なテーマを描写している各曲は、多くのリスナーの心と重なり得るはずだ。人間として当たり前すぎることを歌いたいという、こたに(Vo&Gu)が今作に込めた想いとは? Bray me インタビューのその他の写真
悩んでいて当たり前、そういう心境に辿り着いている
──フルアルバムは初めてなんですか? はい。バンドを始めてから16年になるんですけど、“これぞBray me”みたいなものを出せるタイミングにやっとなったと感じたので、そういうアルバムにしたいと思っていました。 ──タイトルは“DUH”。なかなかユニークですね。 最初、漢字ひと文字にするという話も出ていたんですけど、アルファベットの大文字3つもインパクトがあっていいのかなと。“DUH”は字面もインパクトがありますし、“ダー”という音の響きもいいし、“DUH”は何か言われたことに対して“当たり前じゃん”って返す言葉みたいなニュアンスもあるんです。それもぴったりだなと思いました。私が歌いたいことは人間として当たり前すぎることなので。 ──“DUH”という字面はキャッチーですね。熱心なファンは“DUH”のタトゥーを入れるかもしれないです。 実際にいるんですよ。オーストラリアから日本にライヴを観に来てくれたお客さんが“Bray me”というロゴのタトゥーを入れていて。あと、「シンシア」という曲名のタトゥーを入れた別の人もいました。だから、“DUH”も出てくるんじゃないですかね? タトゥーを入れたら見せてほしいです(笑)。 ──(笑)。新曲が5曲収録されていますが、30代に入った中で感じるようになったことがさまざまなかたちで描かれている印象がしました。 バンドをやりたくてやっているというのがベースにありつつも、やっていく中でいろいろ迷うのがリアルなところなんです。迷いがあるのは当たり前のことだと思うから、そういうことも歌いたいんですよね。 ──「30's」で歌っている月日が流れるのが10代の頃とかよりも早いと思える感覚とか、まさにリアルなところなんでしょうね。 そうですね。この先もっと早くなると言われているから、「30's」をライヴでやる時のBPMは年々早くなるかも(笑)。 ──(笑)。何歳になっても新しい何かを探す気持ちも伝わってくる曲です。 同じ繰り返しの中でも大事なことはあるし、新しい何かを取り入れていくのも自分の進化につながると思うんです。そういう人でいたいし、そういうバンドでありたいし、そういう音楽を作りたいです。新しいものに左右されるわけではないけど、好きなものに対してのアンテナは常に張っていたいんですよね。 ──《きっと多分後悔はどの道するんだろう》と歌っている「イエスタデイ」も共感するリスナーが多いと思います。 そういうふうに聴いてくれたら嬉しいですね。私は後悔しないほうを選ぶって無理だと思っていて。何を選んでもその先でうまくいかないことがあるだろうし、後悔は必ず生まれるので、だったら好きなほうに行ったらいいんじゃないかと。自分もそういうふうに生きていきたいし、どこにだって幸せはあると思っています。そういう当たり前のことを描きたかったのが「イエスタデイ」です。 ──例えば地元の同世代の近況を聞いて、“自分にもそういう人生があったのかもしれない”と感じることはありますよね? はい。まさに今の自分がそういう期間です(笑)。でも、「イエスタデイ」の歌詞の《これが良かったと分かるのは最後でいいや》は、自分でも“本当にそうだよな”と思うんです。そういうふうに生きていきたいですね。 ──悩みってどんな状況にいても必ず生まれると思います。 そうなんですよね。私にとっての音楽の発端は、悩んだり、周囲に馴染めなかったりといったところなので、悩んでいて当たり前だと思っています。そういう心境に辿り着いていますね。 ──「SEEKER」は音楽に心を動かされた感覚を大切にし続ける姿を感じました。 “音楽って何だろう?”って漠然と考えたりするんですけど、初めて心を動かされた時の眩しい光みたいなものをずっと追い求めているような感覚があるんです。 ──“迷いがあるのは当たり前”ととらえていることも含めて、明確な答えを求めているわけではない姿をBray meのさまざまな曲から感じます。ご自身ではどのように思いますか? そうなんだと思います。答えとかゴールってない気がしますね。“迷いも抱えたまま行けるぜ!”みたいになっているのが、今の自分なのかなと。 ──迷いを含みつつもさわやかに疾走する「SING TO MYSELF」は、今おっしゃったことととても重なるんじゃないですか? そうですね。全部の曲が自分のことなんですけど、より自分のことでしかないことを歌うようになっているのかな? 誰かの背中を押したいとかよりも、独り言のようなことを聴いた人が解釈した結果、背中を押せたりするのが好きなんです。「SING TO MYSELF」もそういうことです。“自分の好きな音楽ってこういうことだよな”と表せて良かったと思っています。音楽からもらったものを自分のフィルターを通して、音楽として鳴らすのがBray meなんです。 ──この曲や「Awaking」はギターソロがカッコ良いですね。 ギターソロはいらないみたいな話が最近あったりしますけど、“カッコ良ければいるでしょ!”と(笑)。私はBray meのメンバーをプレイヤーとしてもすごくカッコ良いと思っているんです。だから、それぞれが輝くのが曲の理想形なんですよね。 ──“弾いてみた”動画とかをアップするリスナーもいるんじゃないですか? いますね。海外でもそういう人がいますし。「魔法のように」のMVを出した辺りから海外からの反応が増えています。 ──日本の音楽に関心がある海外の人は結構いますからね。 アニメの曲も、かなり聴かれているみたいですね。『ぼっち・ざ・ろっく!』に下北沢SHELTERがモデルになっているライヴハウスが出てきますけど、そのSHELTERの普通のブッキングライヴとかの時に海外の人が来るようになっていますからね。 ──いわゆる聖地巡礼として来ているんですね? そうなんです。そういうきっかけでBray meのライヴを観てくれて、好きになってくれた人もいました。きっかけはなんでもいいんですよ。とにかくどんなかたちであっても、届いてくれたら嬉しいんですよね。