今、注目を集めるワインカントリー カナダの「プリンスエドワード郡」日本では珍しいボトルを青田買い!
#290 Prince Edward Countyプリンスエドワード郡(カナダ)
北はカナダ・オンタリオ州、南はアメリカ・ニューヨーク州に接するオンタリオ湖は、面積約1万9,000平方キロメートル。北米の五大湖の中では最小とはいえ、四国4県を合わせた大きさとほぼ同じと考えると、やはり広大です。 【画像】ワイン愛好家がまず訪れる、数々の賞に輝くエクスルテト・エステーツ。 カナダのトロントで見るオンタリオ湖は、摩天楼の傍らにあるオアシス的な存在。ビル群を見上げてから、ふと湖へ視線を向けると、水辺ならではの癒しを感じます。 今回は、大都会トロントからクルマで約2時間、オンタリオ湖北岸に位置するプリンスエドワード郡へ。同じオンタリオ湖でもカントリーサイドで見ると、旅情感がグッと増し、印象派の絵画のようです。 実はわたし、大きな勘違いをしていました。 プリンスエドワード郡を、『赤毛のアン』のプリンスエドワード島のことだと思い込んでいました。お恥ずかしいかぎり。 プリンスエドワード郡はオンタリオ湖の北部の半島のように突き出た地域。プリンスエドワード・カウンティの頭文字をとってPECとも表記し、地元の人は「カウンティ」と呼んでいます。勘違いしていたプリンスエドワード島とは1,000キロ以上も離れています。 プリンスエドワード郡は本土との間はクィンティ湾で隔てられ、一部陸続きになっている北西部もオンタリオ湖へ抜けられる運河があるため、いわば“島”のような地形をしています。
オンタリオ湖も一役買っている新たなるワインカントリー
そんなプリンスエドワード郡、実は、この15年で急成長を遂げている注目のワインカントリーです。 新しいワインカントリーとして注目され、権威ある専門誌『ワインスペクテータ―』でも取り上げられているプリンスエドワード郡。けれど、自国消費がほとんどなので、残念ながら、日本ではあまり見かけません……。 このワインブームのはじまりは2001年の「ワウプース・エステーツ・ワイナリー」の開業から。 もともとプリンスエドワード郡のテロワールは、冷涼な気候に適合するぶどうの品種を育てるのに、適していました。 頁岩の欠片が混じった石灰岩の基盤に粘土質の土壌で、表層に石が多いこのエリア。多孔質の石灰岩は雪解け後の水はけがよく、また熱伝導率が高い石が多いため春には早くから土中が暖かくなるのだとか。ちなみに石灰岩はブルゴーニュなどの基本的な土壌と共通するそうです。 冬はマイナス30度まで下がることもある厳しい気候のプリンスエドワード郡、オンタリオ湖の存在もぶどうに恩恵を与えています。冬は暖かな湖水が冷えきった気温を緩和し、夏は湖を渡る西風が気温を涼しく保つのだとか。 こうした地質や気候など、この土地のテロワールを理解して、試行錯誤しながら、その個性をワインに表現する作り手が多いのも、プリンスエドワード郡の特徴のよう。 そんなテロワールを大切にした、個性的なワイナリーが今や40軒近くを数えるまでに。 ワインをめぐる動きがあったのとほぼ同時期に、オーガニックな農法の生産者や地産地消のレストランといったスローフードの潮流が芽生え、今、結実しつつある気運。これからが楽しみ!