「負けて悔しくないんか?」DeNAを“日本シリーズ王手”に導いた桑原将志の猛ゲキ…“全員一丸”を引っ張るガッツマンの「7年前の悔しさ」とは
こんなところでくじけている場合じゃない
今やれることをやる――。 常にベストを尽くすこと。この言葉は、桑原の人間性を表している。どんな逆境であっても、どんなに不遇であっても、今の自分になにができるのか、どう行動すればいいのか。紆余曲折の野球人生、プロになってからもこのマインドが大きな指針になっていると感じてならない。確実に怪我をしているとおぼしきとき、若手から「クワさん、大丈夫ですか?」と訊かれても「大丈夫じゃ!」と大きな声で笑顔を見せ、黙々と練習をこなしていく。 何がそこまでそうさせるのかと問うと、桑原は達観したように言うのだ。 「例えば悩んだとしても自分一人だけの問題じゃないんですよ。自分一人のためにどれだけの人が時間を費やしてくれたのかを考えると、本当に計り知れないので、やっぱり落ち込んではいられない。苦しくなったときは、自分を支えてくれた人たちの顔を思い出すんです。こんなところでくじけている場合じゃないって」 桑原は「自称“永遠の若手”です」といつも笑って言っているが、その根本には練り込まれた野球人としての核がある。だからこそこの大事な日本シリーズ、桑原の胆力が必要だったのだろう。 この数年来、DeNAはCSには進出するもなかなか勝ち上がれない状況がつづいていたが、桑原はそれについて次のように語っていた。 「短期決戦というのは考えすぎても仕方がないんで、もう開き直っていったろうって気持ちで戦っていたけど結果が出なかった。これはもう自分たちの力の問題なんだって。やっぱり大事なのは個の力を高めること。そして全員が同じ気持ちになって、同じ方向に向かっていくしかない」 個を高め、それを結集させ、全員がひとつの目標に向かっていく。特に今回のポストシーズンを見ていると、桑原の述べていたことが実現しつつあるようだ。
ホセ・ロペスの金言
ふと思い出したのは、前回日本シリーズに出場した翌年の春季キャンプで、当時の主力であり精神的支柱だったホセ・ロペスが桑原に伝えた言葉だ。 「野球選手として成績を残すことは大事だけど、それはシーズンが終わってから振り返ればいい。まずは“チームの勝利”だけに集中することが重要。チームをどうやって勝たせればいいのか。自分の力を出し切って、チームをひとつでも勝たせたいという気持ちをもって戦うことが大事なんだ」 目の前の数字や結果に左右され、本質を忘れてはいけないという、10歳上のロペスの至言だった。まだ若かった桑原はいたく感銘を受けたという。 時を経ての再びの日本シリーズ。打撃や守備で大きく貢献したとしても「アウトをひとつ取れただけ」「どんな形でも得点することが大事」と、桑原は表情を変えることなく答えている。淡白ではあるが、そこに事の重さと本気さを感じてならない。 全員が同じ方向を向き戦っている状況下、「その一人になれることは自分にとって誇りです」と、桑原は胸を張って言う。 日本シリーズ優勝まであと1勝。夢の頂へ向かう極限の戦いのなかで、酸いも甘いも噛み分けた桑原がどんなプレーやアクションを起こしてくれるのか目が離せない。
(「ハマ街ダイアリー」石塚隆 = 文)
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