秋田空港の「自衛隊機使用」問題 知事の“過激”発言は妥当か?
「戦闘機を配備しない」などの協定
秋田県の佐竹知事が、有事の際に自衛隊機が民間空港を使用することについて、「使えます。当然でしょ」と発言した上、「駄目ですという知事は相当ばかだよ」とも述べ、他県の知事を暗に非難するような発言をしました。秋田県が管理する秋田空港には、航空自衛隊の秋田救難隊も常駐していますが、県と自衛隊は、部隊配備の際に協定を締結し、配備する航空機は救難用航空機に限るものとした他、戦闘機を配備しないなどと取り決めています。そのため、共産党が反発し、有事の際も、協定の通り、救難用に限定するよう申し入れをしました。 佐竹知事は、「有事の際に(国家に)沿うのが地方機関」、「有事の際は全部接収。これが国家意思」などとも述べており、安保法制審議が国会で大きく問題となっている中、少々過激とも取れる発言をしていますが、そもそも、なぜ今、このような発言をしたのでしょうか。
秋田知事の“過激”発言の背景
伏線は、5月30日、『東北六魂祭』の初日にありました。 この日、震災からの復興を願った祭りを盛り上げるため、航空自衛隊のアクロバットチーム「ブルーインパルス」の展示飛行が行われています。このフライトは、佐竹知事が自衛隊に要請した結果、実施されたものだったのですが、産経新聞は、要請者である県が、ブルーインパルスに秋田空港を使わせなかったため、燃料の関係で展示飛行の科目が削減されたと報じました。 この報道の結果、秋田県に対する批判が起こっています。直接の抗議があったか否かは不明ですが、ネットでは、心ない秋田県批判が起きていました。佐竹知事の発言は、この秋田県批判が伏線になっています。 秋田空港は、空自の救難部隊が配置される際、佐々木知事(当時)と防衛事務次官が、部隊配備に関して協定を締結しています。内容は、配備する自衛隊の航空機を、救難用航空機に限るとしている他、戦闘機は配備せず、戦闘機の訓練にも使用しないと定めています。六魂祭において、ブルーインパルスが秋田空港を使用しなかった理由には、この協定の存在が関係していたようです。 ただし、協定の文面上、広報目的であるブルーインパルスの空港使用は禁止されてはおりません。ブルーインパルスの空港使用は、個別に調整の上、可能であった可能性もあるものの、今回は空自側から秋田県に対して使用調整がされなかったようです。 ですが、今年3月、秋田市議会において、六魂祭におけるブルーインパルスの飛行反対の声が出るなどしたこともあり、自衛隊側が協定の存在に留意し、県に遠慮したという構図もありそうです。過去には、空港以外の県所有遊休地を、自衛隊側が一時的に借用したこともありましたが、反対の声が出たため、翌年以降の借用が断られたという事例もあります。 その一方で、秋田県のHPに掲載されている知事の発言を正確に確認すると、今回の発言は、六魂祭よりも国会で審議中の安保法制に絡んだものであった事が確認できます。 佐竹知事としては、「国家の有事の際に、(中略)国家のその全体の目的に沿うのが地方機関です」と発言するなど、国家的緊急事態(有事)においては、地方機関は国に従い、あらゆる努力をすることが当然とする信念を持っているようです。そのため、東日本大震災においても、空港・港湾等を自衛隊だけでなく、米軍に対しても使用を許可したことを例示しています。