リモートワークは限界なのか。完全出社、急成長企業に見る現実
当たり前の基準を上げる
「リモートでもしんどいことを乗り越えられるとは思うのですが、乗り越えられる量が違うのではないでしょうか。自分の家で勉強すればいいのに、塾に行くのと近い感覚かもしれません。会社に来たら、少なくとも周りが仕事をしている。そうなったら、やらざるを得ない。ある種の強制力がある」 中川さんは週5出社するメリットの前提をそう話す。その上で重要なのが、いかに組織として「当たり前」の水準を高めるかだという。 もちろん、リモートワークでも自律的に仕事を進められる人はいる。ただ、特にパフォーマンスが上がらない社員がいる組織や、テラチャージのようにマーケットとプロダクトがはっきりしていて組織的に営業していく必要があるような事業領域では、社員が顔を突き合わせて進めていくことで最大限スピードが上がる場合もあるという。 テラチャージが行うEV充電器の設置事業では、設置先を確保する営業活動や、政府の補助金を押さえる仕事、設置工事の計画を詰める作業など、かなり地道に一つずつ進めていかなければならない業務が多い。 営業先とどんな話をするのか、そのときどんな表情をしているのか ── 。組織として高いレベルで方法論を統一することは、成果を出す上で非常に重要だ。単に成功事例を共有するだけでは、どうしても全員を高いレベルに引き上げることが難しい。 「できる社員は勝手に修正できるのですが、中にはうまくいかない社員も出てくるものです。やっぱり『横で見てこうした方が良い』と膝を詰めてやらないと成長しない」
「ロジカルの先」に行かなければ勝てない
技術的な側面だけではなく、出社による「熱量の伝播」も勝てるベンチャーになる上では重要だと中川さんは話す。 「横でガンガン営業かけている社員が数字(成果)を出してきたら、『自分も頑張らないとな』と思いますよね。それが組織全体でできるようになると、事業は勝手に伸びていくはずです」 朝、会議が終わった瞬間に営業社員が電話をかけ始める。ガチャガチャとした音がオフィスに響く。周囲の社員が仕事をしている音や空気、緊張感がある。オンラインでは決して感じられない雰囲気だ。 昭和的な考え方かもしれないが、それを社員全体に伝えることが週5出社の一番のポイントなのだという。 「No.2として、社長の熱量と共に戦うメンバーを増やさないと、ロジカルな事業で終わってしまう。ロジカルを超えた先に行かないといけない」
三ツ村 崇志