新型マクラーレン・アルトゥーラ・スパイダーには、繊細な味わいが加わりました 超高級スーパーカーのオープンモデルは爽快だ!
あらゆるシーンで楽しめる
ここで「スポーツ」モードにシフトすると、3.0リッターのV型6気筒ガソリンツインターボエンジンが存在感を主張するようになる。このエンジン、MY25より最高出力が20psアップして605psになっているけれど、高速道路も含めて公道で感じるのは、パワーアップよりも音がよくなっているということだ。工作機械っぽかった色気のない音が、ヌケのよい、耳に心地よい音に変化している。これはうれしい。 イイ音を楽しもうと、積極的にパドルシフトを行うと、小気味よくスパン! スパン!とシフトダウンをキメてくれる。MY25より、内部機構を見直すことでデュアルクラッチ式のトランスミッションの変速スピードが25%向上しているとのことで、しかも変速ショックが大きくなるというような弊害も感じられない。 電光石火のシフトチェンジを行うことも、クルマ全体の動きがすっきりしたという印象の要因だ。 撮影場所に到着して、おっかなびっくり、屋根を開ける。約10秒で、ハードトップはびっくりするほどスムーズに格納される。帽子を用意しなかったことは後悔したけれど、エアコンの効きは強力で、炎天下でも車内はクールだ。 撮影を終えて、オープンの状態で試乗を続ける。屋根を開けた状態でもボディの剛性の高さは圧巻で、高速道路の荒れた路面を突破しても、ミシリとも言わない。考えてみればそれも当然で、このクルマの基本骨格はF1で培ったテクノロジーを注ぎ込んだカーボンモノコック。F1と同様、屋根なんかなくたって平気なのだ。 サーキットでクーペとスパイダーを乗り比べたら、それは違いもありましょうが、公道を走る限りは屋根が開くことに由来するネガはまったく感じられない。 深夜の住宅街や静かな湖畔の森のかげではEV走行、ワインディングロードではモーターとエンジンが織りなす新しい感覚を堪能し、そのままサーキットへ行っても楽しめる。 アルトゥーラはもともとそういうクルマであったけれど、大きく進化したMY25のスパイダーには、そこに繊細な味わいが加わり、さらに魅力的になっている。そしてこの進化のスピードには、目を見張るものがある。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)