将来、AIによって変わってしまう仕事とは?イギリス教育省の最新研究から読み解く
ChatGPTのような生成AIを初めて使ったときに、私と同じような経験をした人も多いのではないでしょうか。それは「頼んだ作業をきちんとやってくれて、その仕事ぶりがあまりにも素晴らしいのでびっくりした」という経験です。 将来、AIによって変わってしまう仕事とは?イギリス教育省の最新研究から読み解く そして、「まずい、このAI、私の仕事もできてしまうのでは…?」と、自分の存在意義に不安を覚えたのではないでしょうか。 「いつか、ただの人間である私たちの仕事をコンピューターが奪ってしまうのではないか?」という疑問はずっと以前からありました。しかし、2022年末のChatGPTリリースに続くAIの急速な広まりには、その分野で働く人も含めて、ほぼ誰もが驚いています。 遠い将来(あるいは近い将来)にそうなることは疑問の余地がありませんが、すでに今でも、私たちの仕事はAIの影響を受けています。2023年には、AIが人の代わりに一定の仕事を担うことができると考えた一部の企業によってレイオフが実施されました。同じ理由から、雇用を見合わせた企業もありました。 ところで、自分の仕事がなくなる恐れがあるかどうかは、どうすればわかるのでしょうか。 最近行なわれた研究が、その答えを教えてくれるかもしれません(気に入らない答えかもしれませんが)。
イギリスの最新研究から見えてくる傾向
多様な企業がそれぞれにとっている動きを、あれこれ評価・推測しても役には立ちません。 この問題の本質を見極め、思慮深い議論をするために、AIが労働市場にどのような影響を与えるかを分析する、従来型の研究がすでに進められています。 イギリスで最近実施されたこちらの研究も、そのひとつです。 イギリスの教育省が2023年11月に発表したこの研究では、10~30%の職種がAIを使って自動化できるとしています。あなたがAIをどう考えているかによって、この数字は多いと思うかもしれませんし、思ったより少ないと思うかもしれません。 この研究では、さまざまな分野の職種の仕事内容や、求められる能力を調査し、それらの仕事で、以下の10種類のAIアプリケーションが役に立つかどうかを調べました。 抽象戦略ゲーム(チェス、囲碁、チェッカーなど) リアルタイム・ビデオゲーム 画像認識 視覚的質問応答(Visual Question Answering:画像に関する質問を提示されたときに、正しい回答を導き出すタスク) 画像生成 文章読解 言語モデル 翻訳 音声認識 楽器演奏認識 これら10種類のAIアプリケーションが、それぞれ個々の仕事にどう関係しているかによって、その仕事に対する、「AIによる影響度(AI Occupational Exposure、AIOE)」スコアが算出されています。このスコアが高くなればなるほど、その仕事はAIによる影響が大きい可能性があるということです。 冒頭の所見には、金融、法律、企業経営といった分野の「専門的な職業」は、AIによる影響が大きい傾向にあり、「特に金融・保険業界がいちばん影響を受けやすいことがわかった」と書かれています。 これを踏まえて考えると、仕事に必要な能力が高度であればあるほど、AIによる影響が大きくなるようです。つまり、より高度な教育と訓練を必要とする仕事であれば、その仕事はAIとのつながりが深い可能性があるのです。 もちろん、その逆も言えるのですが、興味深いことに警備員は別です。 自動セキュリティ技術はあちこちで見られるようになってきています。ですから警備の仕事は、高い教育も豊富な実務経験も求められないものにも関わらず、同じ種類のほかの仕事よりもAIの影響が大きいのです。 いずれの事実も、必ずしも悪いこととは言えません。この研究で指摘されているように、国際労働機関(ILO)は、ほとんどの仕事が、AIの影響を部分的に受けるだけだとしています。 つまり、こうした職種の人々がAIによって完全に仕事を奪われるというよりは、かなり多くの人が「AIの影響によって利益を受ける」可能性が十分にあるのです。