韓国のフィリピン家事管理士モデル事業、専門家が指摘する3つの争点
「コリアンドリーム」を抱いて雇用許可制(E-9ビザ)で入国した100人のフィリピンからの家事管理士は7日、京畿道龍仁(ヨンイン)の会場で安全保健などの共通教育を受けつつ、「外国人家事管理士モデル事業」を準備した。専門家は、1カ月後に迫ったモデル事業の3つの争点として、紛争手続きの設定、最低賃金などでの差別是正、モデル事業の公正な評価を提示した。 まず、サービス利用者と労働者との間で発生しうる紛争を処理する手続きを、政府とソウル市が設けるべきだと専門家は助言する。政府は、サービス提供機関が2人の通訳士を雇用し、フィリピン家事管理士とサービス利用家庭との間で発生する対立の予防、対応にあたると表明している。韓国労働研究院のチョ・ヒョクチン研究委員は7日のハンギョレの電話取材に対し、「批判されている『業務範囲』問題はもちろん、利用者と労働者との間で感情的な問題が発生した際、『マッチング』をどのように変えるかなどを考慮した紛争手続きを政府が設けるべきだ」とし、「外国人家事管理士を管理したことのないサービス提供機関が紛争を解決する第1の主体になると、フィリピン家事管理士を保護する水準が低くなる恐れがある」と語った。ソウル市と政府は、家事手伝いと利用者をつなぐサービス提供機関として(株)ホームストーリー生活と(株)ヒューブリスを選定している。 今回のモデル事業が最低賃金の差別適用の根拠として利用されることがあってはならない、との声もあがっている。そもそもソウル市は、子育て支援サービスを安価に提供するために今回のモデル事業をおこなっている。ソウル市のオ・セフン市長は依然として「月100万ウォン(約10万7000円)の」外国人家事管理士が必要だと主張している。法務部と雇用労働部も現在、外国人留学生(D-2)、卒業生(D-10)、結婚移民の家族(F-1-5)、外国人労働者の配偶者(F-3)などの国内在住外国人が家事使用人として活動できるよう、細部案をまとめている。家庭と直接契約を結ぶ家事使用人は最低賃金法が適用されないため、「フィリピン家事管理士モデル事業」期間中に最低賃金の差別適用問題は改めて提起される可能性が高い。 韓国非正規労働センターのナム・ウグン所長は、「ケア労働の特性を考慮すると、サービスの質を担保する教育が不十分で、言語コミュニケーション能力も備わっていなければ、移住労働者当事者に対する人権侵害だけでなく、世話される子どもも被害を受ける恐れがある。だが政府は依然としてケアサービスにコスト的視点からのみアプローチしている」と述べた。このことと関連して、「入居型」で最低賃金を適用しない香港やシンガポールの例よりも、韓国と経済や人口の規模の近い日本が最低賃金を適用する「通勤型」を採用していることを参考にすべきだ、とも指摘されている。 モデル事業に対する評価の過程の透明さと公正さも争点の一つだ。今回のモデル事業の評価は労働部からの委託研究で進められており、モデル事業が終わる来年2月ごろに公開される見通しだ。しかし政府はすでに6月に、来年上半期に雇用許可制で1200人の外国人家事管理士を導入すると表明している。モデル事業で発生した問題点の評価も行わないうちに、まず事業の拡大から発表したのだ。 政府やソウル市の立場だけでなく、労働界の声も評価過程に反映し、公正さと客観性を保証すべきだとの指摘もある。移住労働者平等連帯は前日発表した声明で、「モデル事業のプロセスにおいて、移住労働者人権団体と労働組合の参加が保証されなければならない」とし、「政府は拙速に家事労働モデル事業を推進しながら、教育であれモニタリングであれ、いかなる参加も拒否している」と指摘した。 キ・ミンド記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )