心肺停止の患者が次々と...救急室のカメラがとらえた放火事件当日 「心拍がある状態で家族に会わせたい」医師は“冷静な治療の選択”とのはざまで葛藤【北新地放火殺人事件】
(栗田晃宏医師)「できるだけ混乱させないようにするのが私の役目でしたので、とにかくシンプルな処置をするようにと拡声器を使って、なかなか声も通らないので、そういう指示を出していた状況です」 病院に搬送されたのは6人の患者。しかし、みな一酸化炭素中毒で既に心肺停止の状態だった。体にススが付いているものの火傷はなく、呼吸器をつけてできるだけ多くの酸素を体内に運ぶ処置が行われた。 (栗田晃宏医師)「実際には全く酸素が体の周りを回ってないので、脳に対するダメージがかなり早い段階で…。脳が回復できないような状態になってしまいますし、脳の後遺症も高い確率で生じていくような病態ですね」
“心拍がある状態で家族に会わせたい” 冷静な治療判断とのはざまで葛藤
救命が難しい一酸化炭素中毒。医師として求められる冷静な治療と、次々に運ばれてくる患者を少しでも救いたいという思いのはざまで葛藤した。 (栗田晃宏医師)「例えばこれが大きな災害の場合は、心肺蘇生や救命措置の適用にならない患者さんなんですけれども、どこまで頑張るかっていうのと、家族の方に心臓が拍動した状態で何とか面会とかちょっとの時間でもという思いがありましたね」 心拍がある状態で家族に会わせたい。酸素投与や心肺蘇生の結果、6人の患者のうち3人の心拍が再開したという。しかし、既に一酸化炭素がからだ中を巡り、その後、全ての患者が息を引き取った。 (栗田晃宏医師)「最初の1人の方だけ、おそらく心臓が動いた状態で(ご家族に)面会されたと思います。結果論になりますけども、結局その3人の方も救命することはできていないんですね。ですから医学的に言うと、本当にそれが正しかったのかというのは、議論が残る」
「気丈に話されているなと…」被害者支援を担当した警察官 遺族を病院へ送り届けた当時を語る
当時、被害者とその家族をつなごうと奔走したのは病院だけではなかった。大阪府警天満署の男性巡査部長(36)は、この事件で初めて被害者支援員に選ばれた。 (巡査部長)「とにかく選ばれたからには、自分のできることを一生懸命やろうと思いました」 大阪府警では約1300人の警察官らを被害者支援員に指定していて、大きな事件が起きた際、病院への付き添いや行政手続きなど被害者家族の身の回りのサポートを担う。巡査部長は遠方から駆け付けた被害者の両親を病院に送り届けたという。