「うゎ!」スズキのSUV「フロンクス」に乗って驚いた…ライバルのホンダ「WR-V」との違いを徹底解説
日本市場では4割近いシェアがあるSUV・クロスオーバーセグメントの中で、需要拡大中のコンパクトSUV。新たに加わった注目モデル、スズキ「フロンクス」を公道で試乗することができた。ライバルのホンダ「WR-V」との差も併せて考える。(ジャーナリスト 桃田健史) 【この記事の画像を見る】 ● 驚きの取り回しの良さ カッチリとしたスポーティーな走り 11月上旬、やっとスズキ「フロンクス」の量産モデルを公道で試乗できた。 第一印象は、「ウァ! なんでこんなに取り回しやすいんだ!」であった。公道に出るまでの間、屋外駐車場内を走っていてもグイグイと曲がるのだ。 全長3995mmに対して車幅が1765mmあるので、全体としてはコンパクトなのだが、かなりドッシリして見えるし、全高1550mmでもけっして低過ぎる感じはない。そんな風貌で、ここまで取り回し性が良いことに驚いた。 実際、最小回転半径4.8mで国内クラストップ(24年10月現在)なのだが、ドライバーの感覚としても、とにかく取り回しやすいのだ。 まさに、スズキが掲げる商品コンセプト「扱いやすいクーペスタイルSUV」を体現しているのである。 筆者は、今夏に静岡県内のクローズドエリアでプロトタイプを走らせているのだが、そこはサーキットのようなコースレイアウトであった。そのため、狭いエリアでの旋回などを行う機会がなく、また、周囲の対象物の距離が遠い位置にあったこともあり、取り回し性の良さを今回のように強く感じなかったのであろう。 エンジンは、排気量1.5Lの直列4気筒をマイルドハイブリッド化。トランスミッションは6速オートマチックだ。 もう一つ、今回の公道試乗で感じたのは「ちょっと(乗り心地が)硬いかな、と思う人がいるかもしれない」というものだ。
● 日本の道路事情に合わせた サスペンションセッティング フロンクスは、国内ではBセグメントSUVに属する。いわゆるコンパクトSUVのことだ。 近年、コンパクトSUVではメーカー間の競争が激しくなってきており、そこに新規参入するスズキとしては、競合モデルに対する差別化のポイントを明確にする必要があった。 そこで、スズキはデザイン、走行性能、扱いやすく・快適、そして予防安全・運転支援機能という、大きく四つの領域でフロンクスの商品性を追求した。 これらの中でも、日本仕様では特に「足回りのセッティング」と「予防安全・運転支援機能」を重視している。 日本仕様と明記したように、フロンクスはインド生産のグローバルカーだ。 その系譜をたどると、初代「バレーノ」が2022年にフルモデルチェンジした。販売地域はインド、中南米、中東、アフリカ、そして東南アジアなど。この2代目バレーノと同じ骨格で、よりスポーティーなSUVデザインとしたモデルが2023年に登場したフロンクスだ。インド、中南米、中東、そしてアフリカなどで販売されている。 そしてこの度、フロンクス日本仕様が登場したというわけだ。 フロンクスの開発総責任者である、森田祐司氏は「日本に導入した初代バレーノについては、ユーザーや販売店から、特に予防安全・運転支援機能の必要性を指摘された」として、フロンクス導入に向けて日本でのニーズを徹底的に洗い出したという。 サスペンションについては、「後席乗員も快適に過ごせる乗り心地」と「より安心感を持って運転できる直進安定性」の両立を目指した。 対応法としては、タイヤ、コイルスプリング、ショックアブソーバー、EPS(電動パワーステアリング)を日本の路面に合わせてチューニングした。 例えばインドの場合、市街地の路面でも大きな穴が開いているといったクルマにとって厳しい環境であるため、少し柔らかめなサスペンションセッティングが必然となる。 それが日本では、よりシッカリした乗り心地とハンドリングの良さを強調することで、フロンクスが本来持っている車体性能をフルに引き出すことができる。 結果、ハンドルの中立位置の感覚(オンセンター・フィーリング)がドライバーにとってつかみやすく、直進安定性があり、ハンドルの切り出しからクルマの動きを先読みしやすいと感じた。 同時に、マンホールや道路の継ぎ目などの乗り越え時の振動や音が抑えられていることも実感できた。 ただし、今夏のプロトタイプ試乗では走行速度域が少し高く、また路面状態がスムーズであった。そのため、今回の市街地走行では走り味がしっかりしていると思う半面、ユーザーによっては「少し乗り味が硬いのでは」という意見も出てくることが予想された。 「乗り味が硬くなっている」と感じる要因の一つとして考えられるのが、コンパクトSUVでシェアを拡大中のホンダ「WR-V」の存在だ。