「わずか1年で黒字にできた」閉鎖寸前の学生食堂、甦らせた生徒たちと校長の秘策 物価高騰、少子化、コロナ禍…一体どうやった?
▽教師は生徒の背中を押すだけでいい 取材した9月19日の夕暮れ。先輩たちが開墾した畑で、女子生徒がサニーレタスや白菜の苗を植えていた。「イモムシって触れる?」「触角あるのはむりー」「私は何でもいけるよ」。そんな会話が飛び交う。 1年の池田佳奈美さん(16)はこの日、初めて参加したという。泥の付いた制服姿で笑顔を見せた。「畑ができる女子高生ってすてきですよね。明日からはジャージーで参加します」 2年の入道和俊さん(16)は建築士志望の友達と一緒に春休みにピクニックテーブルを制作した。木材は地域のリサイクルショップからもらい、リアカーで運んだ。自分たちが作ったものを学校のみんなが利用してくれたことが「今年一番うれしかったです」。 今は受験勉強に集中する3年の宮西優依さん(17)は身近なことに関心を向ける大切さを知ったという。「普通に高校生活を送っていたら分からないことに気づけました」。自分たちで開発した梅ジュースの販売経験から、マーケティングを学んで食品関係の仕事に就くのが目標だ。
泉谷さんは今年、定年退職した。ただ、今の校長や教職員も活動を理解し、支援 する。泉谷さんも、東かがわ市教育委員会の職員に転身し、三本松高校の学食運 営に継続して関わっている。「夏休みに2年の生徒が3、4人で畑の草抜きをしていた。普通は『暑いとか、しんどい』とか言うやん。暑い中でも、黙々と作業をする姿は僕の想像を超えていたな」 生徒の姿に目を細め、こう語った。「先生の役割は失敗しても良い場所を作って、生徒の背中を押してあげるだけでいい。『言われたことをする』という枠を出た経験はきっと将来のためになる」