「世界と商売するため」港に集中投資をする“韓国・中国”の本気
かつては水産物の争奪戦で中国に敗れ問題になった「買い負け」。しかしいまや、半導体、LNG(液化天然ガス)、牛肉、人材といったあらゆる分野で日本の買い負けが顕著です。2023年7月26日発売の幻冬舎新書『買い負ける日本』は、調達のスペシャリスト、坂口孝則さんが目撃した絶望的なモノ不足の現場と買い負けに至る構造的原因を分析。本書の一部を抜粋してお届けします。第6回。
日本に寄る魅力がなくなった
日本は製造コストの安さを極限まで追求し、新興国の奥へ奥へと進み製造拠点を海外に移管してきた。俗に言う空洞化だ。私はかつて日本の有名製造業で勤務していた。そのときサプライチェーン担当役員は「日本に寄与するためには空洞化の徹底が必要だ」と述べており衝撃を受けた。日本は頭脳で勝負する。生産は海外。 15年ほど前「マザー工場」なる言葉が喧伝された。生産が減っていく日本では生産品質の技を磨く。そのノウハウを海外の工場拠点に伝えていく役割を果たす。まるで母親が子供に人生で大切なことを教育するように。 しかし輸出は減少、あるいは横ばいが続き、製品・商品の物量が伸びないなか、国際物流のなかで日本が地位を低下させるのは当然だった。そして国際物流の低下がさらに日本の地位を低下させたのは皮肉としかいいようがない。 いっぽうでコンテナ船運行で有名な台湾の会社は2021年末のボーナスが40か月になったと発表した。モノを作る、ではなく、運ぶのはそれだけの収益と利益を稼げると証明した。 国際物流をサポートし企業へ物流サービスも提供するコンサルタントに、日本“負け”の状況について聞いてみた。氏自身かつて物流会社に勤め、海外勤務を通じ国際物流の厳しさを現場で知っている。 「簡単にいうと、日本の魅力がなくなったことに尽きます。船舶の企業は、儲かれば日本を素通りすることはありません。当然ですよね。それ以外に理由はないですよね。 日本からはお金がもらえる貨物がどんどん減っているので、どうしても後回しにせざるをえません。つまり儲からないんですよね。積載率も満載にならない。しかも少子高齢化でしょう。人口も伸びていない。残念ながら経営側としては日本を重要視しないのが合理的です。 シンプルに考えると、ずっと安い商品しか買わない日本という国があって、さらに物量も少ない。でも時間はかかる。そりゃ、そういう国は選ばないでしょう。 日本の凋落としてよく取り上げられるのは大きな港が大半です。しかし東京や横浜など、大きな港は国際コンテナ戦略港湾といって国が力を入れているところなんですね。これらに選択と集中で取り扱いコンテナ数を増加させようとしてきました。 一方で地方港などは無視されがちです。大きな港以上に地方港では取扱量が減少しているところが少なくありません。だから日本全体では想像以上に世界的地位を落としていると言えます。 ビジネスというゲームを、モノを“運ぶ人たち”が左右しています。作っても運べなければ売れないから。モノを作っているユーザー側としたら不便なことばかり。だから日本の荷主たちは苛立っていると思う。 日本の港の凋落をきっかけとして、韓国の港がすごく伸びている。これを危機と感じる日本人があまりに少ない。これこそ、ほんとうの危機ですね」 まっとうな指摘だと思う。 日本がずっと経済成長を続けて諸外国が売りたいと思ってくれる国だったらいい。でも、現実的には人口構成から右肩下がりと予想される。量は縮小していく。しかも長く続いたデフレで諸外国と物価差は開く。日本は諸外国に比べて高い商品を買うわけではない。