12歳の少年が見た昭和24年 片足失ったシベリア帰りのおじさんとアプレゲールの東大生 プレイバック「昭和100年」
9月にはインドの首相から上野動物園にメスのゾウ「インディラ」が贈られた。戦時中は脱走の恐れがあって多くの動物園で珍しい動物が殺され、上野動物園もほとんど空き家になっていた。上野周辺の子供たちが署名を集めて実現したようだ。僕も一度もゾウを見たことがないので連れて行ってもらいたいが、今は家族連れなどですごい人出だそうだ。
日本は元通りになってきたのだろうか。それとも戦前とは違う日本になっているのだろうか。先日は「光クラブ」という金融業者の事件があった。
「必ず儲(もう)かる」と言って大勢の人からお金を集めて高く貸したりしていたようだが、その会社の社長がまだ20代の東大生だったことにみんなが驚いた。若者が戦前にはなかったような行動をとることを「アプレゲール」「アプレ犯罪」とか言うようだ。
シベリア帰りのおじさんは、足がないので働き口もないという。東大生社長とあまり年も変わらないのに何だか不公平だと思った。ただ、その東大生も学徒として終戦を迎え、事件後に毒を飲んで自殺したと聞いて、なおさらやり切れない気持ちになった。
※終戦直後、ソ連に占領された満州や朝鮮半島北部などからシベリアに抑留された日本人は約60万人にのぼり、収容所(ラーゲリ)で過酷な労働と生活環境を強いられた。5万人以上が現地で死亡、引き揚げの完了は昭和31年の日ソ共同宣言後までかかった。