J2横浜FC浮上の裏に「雑草ルーキー」と「現役大学生」
「はたいておけばチャンスになったシーンもあったし、状況判断の部分で物足りないところがあった。味方を使うところと自分で行くところをもう少し上手く使い分けられたら、もっと相手も嫌がったはずだし、ドリブル一辺倒の選手じゃこの先、通用しなくなってくると思うので。相手が対策を講じてきたときにその裏を突くとか、もっと予想外のことができるような選手になりたい」 鹿児島戦をもって、松尾は仙台大学へ戻る。今月末から大阪で開催される総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントに臨むためで、大会後に関しては横浜FCと仙台大学とあらためて話し合う。 「自分としても一番離れたくないタイミングなんですけど、大学の方でしっかりとプレーしてきたからこそ、こういう舞台に立たせてもらっているので。やるべきことをやって、また戻ってきたい」 戻って来られるとして、チームを離れるのは最大で2試合。成長していると実感しているからこそ、松尾は昇格争いが佳境を迎える秋の陣以降での復帰を見すえる。下平監督も「彼の成長を考えたときに何が一番いいのかを、大学側としっかり相談したい」と慎重な言い回しに終始しながらも、スピードだけではなく松尾の献身的な守備も高く評価している。 「ウチの両翼は本当に守備でも献身的ですし、何よりもスピードがあるので、押し込まれた状況から相手を裏返すことのできるスプリント能力がある。そこはチームにとって非常に助けになっているし、大きなストロング(ポイント)になっていますね」 ブラジル人のタヴァレス前監督時代は中位に低迷していた横浜FCは、京都サンガF.C.と試合数がひとつ少ない大宮アルディージャに勝ち点で1ポイント差に肉迫した。残り3分の1を切ったJ2戦線は、10連勝中の柏レイソルが抜け出しつつある一方で、2位以下は大混戦となっている。 松尾が大学に戻っている間は、先発機会に飢えていた齋藤功佑(22)や斉藤光毅(18)ら、下部組織出身のホープたちが目の色を変えて奪いに来るだろう。そして松尾自身も「18歳の選手もいるし、22歳の自分はもう若くない」と刺激を分かち合っていると明かす。13年ぶりのJ1昇格へ向けて、中山と松尾という若き両翼を触媒とする形で、横浜FCのなかに理想的な循環が生まれつつある。 (文責・藤江直人/スポーツライター)