開発の発端は西日本豪雨 コロナ禍でヒット 青山商事の「ゼロプレッシャースーツ」【けいざいトリビア】
伸縮しやすい素材を使い、着た際の圧迫感が少ない青山商事(広島県福山市)の「ゼロプレッシャースーツ」。新型コロナウイルス禍で在宅勤務が広がっていた2021年に登場し、自宅で羽織る手軽なスーツとしてヒットした。カジュアル化が進むビジネスウエアを象徴する商品だが、開発の発端は西日本豪雨だった。 【写真】ゼロプレッシャースーツを手に開発時を振り返る高橋副部長
「防災用」スーツの実現目指す
18年の災害時、本社のある福山市では多くの民家が床上浸水した。開発部の高橋拓也副部長(40)の自宅にも水が迫り、家族は知人宅に避難した。「災害時に役立つ衣類を作れないか」。経験から企画が動き出した。 いつものスーツが避難所でも着られ、枕や毛布にもなる―。そんな「防災用」スーツの実現へ、伸縮しやすく男女兼用、水をはじくなどの機能を定めた。ブランド名やロゴも決定。だが消費者に受け入れられるか見通せず、商品化は難航した。 転機は20年の新型コロナ流行。在宅勤務ではフォーマルさより、楽に着られるかが重視される。「避難所での服と発想が同じだ」。高橋副部長のアイデアと結び付き、再び企画が動き出した。
約15万着を売り上げる大ヒット
発売後、約15万着を売り上げる大ヒット商品となった。想定した用途とは違う形で世に出たが、当初の企画から残った機能は多い。高橋副部長は「結果的には災害時にも利便性を実感してもらえるスーツになった」と感じている。
中国新聞社