新入幕の獅司、2連勝に「うれシシ」 懸賞9万円を母国・ウクライナの両親へ送金へ/九州場所
大相撲九州場所2日目(11日、福岡国際センター)ロシアによる侵攻で戦禍にあるウクライナ出身初の新入幕力士、東前頭16枚目の獅司(27)は武将山(28)を寄り切って、2連勝とした。3大関は初日に続いて安泰。新大関大の里(24)は、王鵬(24)を押し倒して2連勝。琴桜(26)は平戸海(24)を寄り切り、豊昇龍(25)も小結若元春(31)を押し出して連勝発進となった。 【写真】獅司が在籍する「雷部屋」の看板を掲げた雷親方。右隣はおかみの栄美夫人 どちらの四つ身でも望むところ。ウクライナ出身初の新入幕となった獅司が、獅子奮迅の躍動をみせて2連勝。得意の右四つに組み止め、左上手を引きつけて武将山を寄り切った。 「捕まえられたからよかった。どっちに組んでも大丈夫。まわしが一番ほしい」 幕内で初めて、初日にはつかなかった3本の懸賞(手取り1本=3万円)も手にした。入門後、ロシアによる侵攻に苦しむ母国には一度も帰国できていないが、両親との連絡は毎日欠かさない。初白星を挙げた初日にも母と話したが、勝った力士が手刀を切り懸賞を受け取る姿をみて「『どうしてあなたには懸賞がないの?』と聞かれた」。現在、母国への現金の送金は困難で、懸賞9万円はインターネット決済で送るつもりだ。 193センチ、171キロ。幕下から十両に上がるまで2年以上かかったが、頭をつける相撲も覚えて十両を8場所で通過。成長を支えているのは日本の「ママ」の存在だ。師匠の雷(いかづち)親方(元小結垣添)の夫人、垣添栄美さん(43)は日大相撲部出身で女子相撲の元強豪選手。全日本女王3度、国際大会出場の経験も豊富にある。 獅司が関取昇進前に右上腕筋を断裂し、力が入らなくなった際に現役時代に左四つからの投げを得意とした栄美さんが左差しをアドバイス。「腕時計をみるように手首をひねって」「まわしを取ったら小指と薬指を通して」。おかみの教えで獅司の攻め手が広がった。 稽古場で指導するのは師匠だが、雷親方は「力士のいいところを引き出せれば、だれが教えてもいいと思う」と寛容だ。しこ名にちなんだ得意のだじゃれは「うれシシ」。勝って、稼いで。2人のママをハッピーにする。(奥村展也) ■獅司 大(しし・まさる=本名セルギイ・ソコロフスキー) 平成9年1月16日生まれ、27歳。ウクライナ・ザポロジエ州出身、雷部屋。同国出身初の力士として令和2年春場所初土俵。5年名古屋場所新十両。得意は右四つ、寄り。生涯通算148勝98敗2休(28場所)。好きな食べ物はすし。193センチ、171キロ。