【速報】旧東洋ゴムの「免震ゴム不正問題」当時の取締役らに約1.6億円の賠償を命じる判決 “経営判断ミスで会社に損害与えた” 大阪地裁での株主代表訴訟 原告側「他の分野でも後を絶たない不正出荷に警鐘鳴らす画期的判決」
株主の男性は、当時の取締役4人に対し計4億円を会社に支払うよう求めていた
トーヨータイヤの株主である兵庫県在住の男性(82)は、「消防組合への出荷取りやめなどを撤回した経営判断が、交換費用や賠償などで会社に損害を与え、信用を失墜させるなどした」として、トーヨータイヤの当時の取締役4人に対し、連帯して計4億円を会社に賠償するよう求め、大阪地裁で裁判を起こしていました。 4人の取締役側は、「某担当者から、補正を行えば免震性能が国の基準に収まる可能性があるという報告を受けたので、国交省への報告を取りやめ出荷を決めた」などと反論(※その担当者は、今回の裁判の証人尋問で「選択肢の1つを示しただけ」と主張)。 また、4人のうち当時の専務と常務は「方針撤回を決めた会議には出席していなかった」と主張。4人のいずれも、「注意義務違反などはなかった」として、株主側の訴えを退けるよう求めていました。
株主が勝訴 国交省への報告や一般公表の義務違反は4人全員の責任を認定
1月26日の判決で大阪地裁(谷村武則裁判長)は、まず、▽免震ゴム事業の担当取締役と、▽品質保証を担当する委員会の委員長だった取締役の2人について、「消防組合への出荷を停止すべき注意義務を負っていた」として責任を認め、2人で合わせて約1億3800万円をトーヨータイヤに賠償するよう命じました。当時の専務や常務については、出荷に関する責任は認めませんでした。 一方で、「国交省への報告や一般への公表を速やかに行わず、会社の信用を毀損させた」として、報告公表に関する義務の違反については、専務・常務含め4人全員の責任を認め、合わせて2千万円の賠償を命令。 最終的に、当時の取締役ら4人に対し、総額約1億6千万円を、トーヨータイヤに賠償するよう命じる判決を言い渡しました。
原告「定年後の人生を少しでも世の中の役に立つ過ごし方ができたのでは」代理人も「画期的な判決」と評価
原告の男性(82)は、定年退職後にロースクールに入って株主代表訴訟の存在を知り、今回の提訴に踏み切ったといいます。判決後の記者会見では、勝訴した心境をこう語りました。 原告の男性(82) 「1人で株主代表訴訟を起こすことは勇気がいることでした」 「定年後の人生を少しでも世の中の役に立つ過ごし方ができたのではないかと、自分自身では満足しています」 また今回の判決を受け、原告の代理人弁護士も「画期的な判決」と評価しました。 原告代理人・由良尚文弁護士 「先日の能登半島地震や東日本大震災、阪神・淡路大震災の例を見るまでもなく、地震大国である日本において、免震ゴムは国民の命を守るために不可欠な製品にほかなりません。今日の判決は免震ゴム製品の重要性を正しく認識し、不正な製品を出荷した旧東洋ゴムの行為を厳しく断じたものと言えます」 「特に被告4人全員について、速やかに国交省に不正を報告し事実を公表すべきだったという義務を認め、それを怠ったとして賠償責任を認めた点は、従来の判例の枠組みよりも踏み込んだ、画期的な判決として評価できます」 「今回の判決は免震ゴム製品にとどまらず、他の分野でもいまだ後を絶たない不正出荷に警鐘を鳴らすものと言えます」 原告代理人・富田智和弁護士 「(不正を)公表する義務を真正面から認め、ここまで踏み込んだ判決はなかなかなく、不祥事の隠ぺいに対して裁判所が警鐘を鳴らした」 「不祥事については隠蔽は論外であるとして、不祥事の公表が遅れると、それ自体が善管注意義務(=善良な管理者の注意義務)違反に問われかねないという点を、裁判所が明確に示したと言えると思います」
トーヨータイヤ「元取締役の責任が認められたことは重く受け止めている」
判決を受けてトーヨータイヤは「元取締役の責任が認められたことは会社として重く受け止めています。当社は同問題のあと、経営体制を刷新し、ガバナンス強化・コンプライアンス遵守に取り組んできました。引き続き、徹底を図っていく所存です」とコメントしています。 (MBS大阪司法担当 松本陸)