サンゴ礁を守りし海の掃除屋。わが名はナマコ
見た目で判断しちゃダメ。 海洋面積の1%にも満たないのに、海洋生物の25%が一生のうちに何らかの形で関わるといわれているサンゴ。気候変動による海洋温暖化や、人間活動に起因する海洋堆積物などによって、白化や死滅の大ピンチを迎えています。 今回、Nature Communicationsに掲載されたジョージア工科大学の研究者らによる論文で、サンゴの健康維持に重要なパートナーが明らかになりました。その意外な救世主は、なんとナマコです。
サンゴの健康の秘訣はお掃除
ナマコは「海の掃除屋」と呼ばれる底生生物で、海底の堆積物を食べ、バクテリアや汚染された有機物を消化し、キレイになった健康な堆積物を海に戻します。ナマコはサンゴや生態系の健康維持にかなり貢献しているんです。 研究結果によると、ナマコはこれと同じ作業をサンゴの表面でも行なって、サンゴの健康を損ねる有機物を取り込んで掃除しているそう。堆積物が原因で起こるサンゴの病気を、ナマコが予防してあげているというわけです。
ナマコがいないとサンゴが死ぬ確率は15倍
長年サンゴの再生に携わり、これまでに1万以上のサンゴを植え付けてきた論文の筆頭執筆者であるCody Clements氏は、フランス領ポリネシアの島でサンゴを植えている際、周辺にたくさんいたナマコを一掃しました。すると、サンゴが枯れ始めたのだそうです。 それまでほとんど植えたサンゴを枯らさなかったClements氏は、何かあるに違いないと確信。サンゴの周りにナマコがいるのといないのとで、どんな違いがあるのかを調べることにしました。 そこで海にナマコがいる区画といない区画を作り、サンゴの健康状態を毎日観察したところ、ナマコがいない区画のサンゴは、根元の方に発生した白い帯のようなものがだんだん上へと広がり、死滅するサンゴもありました。 ナマコがいる方の区画のサンゴでは、いない区画よりも病気の広がりは見られませんでした。調査の結果、ナマコがいない区画のサンゴは、いる区画と比較して15倍も死滅しやすかったそうです。 太平洋のアメリカ領パルミラ環礁で、違う種のナマコを用いて同じ実験を行なったところ、同様の結果が得られたとのことです。