YOASOBIが韓国の音楽TV番組に出演し、日本語で「アイドル」を歌った衝撃…26年前には日本語の曲を放送できなかった国で
韓国人の好意的なコメント
では、YOASOBIは韓国でどう受け止められたか。YouTubeにある韓国語のコメントをいくつか拾ってみよう。 〈こういう文化交流はいいと思います。韓国のアイドルも日本に行って音楽番組にたくさん出演しているのに、なぜ日本の歌手は韓国の音楽番組に出たことで悪口を言われないといけないのか理解ができませんね〉 〈この歌をエムカ(音楽番組)で聞けるようになるとは笑よくやった本当に…どうやったらこんな声が出るんだろう〉 〈日本の歌手がたくさん来て公演してくれたらいいお互いに音楽交流をたくさんすることによってもっとK-POPの多様性を育てることになる〉 〈YOASOBIはライブが上手ですね……わかってはいたけど、本当に上手です(笑)エムカのような音楽番組には韓国人でなければあまり出てこなかったので興味深くもあり、良いですね〉 〈Mnetがこんな部分でオープンマインドで本当に見ていて気持ちがいい。YOASOBIの舞台は素敵でした、良い思い出になることを願っています〉 その他にも韓国語で書かれたコメントを読んだが、いずれも好意的な反応だった。YOASOBIの実力を素直に称賛するコメントにあふれていた。大好評だったことが分かる。
「日韓関係の最高到達点」と呼ばれた日韓共同宣言
くしくも、僕が留学した2023年は「未来志向のパートナーシップ」をうたった「日韓共同宣言」の発表から25年の節目の年であった。この宣言は1998年10月8日、小渕恵三首相と、訪日した金大中大統領が署名したもので、副題は「21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」である。 政治、経済、文化など、43項目の行動計画がつくられ、「日韓関係の最高到達点」とも呼ばれている。 この宣言をきっかけに、韓国ではそれまで禁止されていた日本の映画や歌謡曲など、大衆文化が解禁された。韓国の映画館で初めて公開された日本映画は、北野武監督の「HANA-BI」である。北野映画は韓国でよく観られている。 1998年に合計約260万人だった日韓の一年間の往来者数は、2018年に1000万人を突破。1998年に約3兆6000億円だった貿易総額が、2021年には約9兆3000億円になった(朝日新聞デジタル、2023年10月5日)。 もちろん、この25年間の日韓関係を見ると、歴史認識問題や領土問題をめぐって対立してきた時期もある。ときのリーダーが変わると、外交関係は揺れてきた。しかし、文化・市民交流の面では、日韓関係は着実に進展してきたといえる。 これまでは日本側がK-POPを消費する側面が目立ってきたが、近年は韓国が日本のポピュラー音楽を消費する側面も目立っている。その象徴がYOASOBIの「アイドル」の流行だと思う。 2023年末の紅白歌合戦でYOASOBIが「アイドル」を披露したとき、大勢のK-POPアーティストたちがダンスを披露して盛り上げたことも話題となった。 このステージは生放送で見ていて、あまりに豪華な顔ぶれのパフォーマンスに感動した。「アイドル」はこのステージのために作られた曲であるとすら思った。 韓国人はYOASOBIに熱狂し、日本人はNewJeansに心を奪われる。そんな時代がすでにやってきているのである。 写真/shutterstock