一人前の社会人なら知っておきたい…経済格差問題で頻出の「ジニ係数」について完璧に理解しよう!
食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。 【漫画】月500時間、時給340円…雇われ店長が明かす「過酷すぎるコンビニ勤務」 長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+α新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。 『大人のための算数力講義』連載第6回 『MARCHが東北大より格上…⁉「私立文系」が入試で数学を必須にしないのは「醜い偏差値競争」のせいだった』より続く
どちらの国のほうが格差が大きい?
格差を巡る議論は、年々高まってきている。そこで、格差問題を論じるときによく用いられるジニ係数について、例を用いて説明しよう。 いま、国民が3人で構成されている2ヵ国ア、イを想定し、それぞれの国民の年収は低いほうから並べて以下の通りとする(単位は万円)。 (ア国)300、900、1200 (イ国)200、200、2000 イ国はア国より格差が大きい国であると思うだろう。ただ、どちらの国民の平均年収も800(万円)である。実際、 ア国の平均年収 (300+900+1200)÷3=2400÷3=800 イ国の平均年収 (200+200+2000)÷3=2400÷3=800 となる。
グラフの準備と計算
ここから、ジニ係数を算出するために必要なグラフを準備しよう。 ア国に関して、年収の低いほうから1人分の合計年収は300(万円)で、年収の低いほうから2人分の合計年収は 300+900=1200(万円) で、年収の低いほうから3人分(=全国民)の合計年収は 300+900+1200=2400(万円) である。 いまxy座標平面において、x座標では人数、y座標では上記人数分の合計年収をとるとする。したがってア国では、次の3点をとることになる。 A(1, 300)、B(2, 1200)、C(3, 2400) さらに原点(0,0)をO、点(3,0)をHとし、線分OC、CH、および折れ線O-A-B-Cを描き込むと図1のグラフになる。 折れ線O-A-B-Cは1905年にアメリカの経済学者マックス・ローレンツが発表したものであり、ローレンツ曲線と呼ばれている。 ジニ係数は、ローレンツ曲線を参考にしてイタリアの統計学者コッラド・ジニによって1936年に発表された指標で、線分OCとローレンツ曲線O-A-B-Cで囲まれた斜線の部分の面積を、三角形OCHの面積で割ったものである。