《翌朝の仕事が気になる時間なのに…》日曜22時台に5作の連ドラが乱立 「ドラマだけじゃない」激戦の様相
「激戦は承知」の日テレとテレ朝
まず「それぞれのドラマ枠がいつはじまったのか」に注目してみましょう。 最も早いのがWOWOWの「連続ドラマW」(22時~)で2008年4月にスタート。次にNHK BSの「プレミアムドラマ」が2012年4月にスタートしました。 さらに日本テレビ系の「日曜ドラマ」(22時30分~)が2015年4月にスタート。そしてABC制作・テレビ朝日系のドラマ枠(22時~、今秋から22時15分~に変更)が2023年4月にスタートしました。 また、TBS系の「日曜劇場」(21時~)は『半沢直樹』がヒットした2010年代中盤以降、22時台にかかる拡大版が増えていました。たとえば昨夏放送された『VIVANT』は全10話中6話が22時台にかかる拡大放送(54分が1回、25分が3回、15分が2回)であり、他のドラマ枠に影響を与えたのは記憶に新しいところです。 これらの推移からうかがえるのは、後発の日本テレビ系とテレビ朝日系が激戦を承知でドラマ枠を新設したこと。「20時台の『大河ドラマ』(NHK総合)、21時台の『日曜劇場』(TBS系)に続いて見てもらいたい」という狙いがベースになっています。 22時台で先行放送していたNHK BSとWOWOWによってドラマフリークに「日曜夜はドラマを見る日」というイメージがあったことも、ドラマ枠を新設した理由の1つ。古くからテレビ業界では「すでに視聴習慣のついた時間帯に同じジャンルの番組をかぶせる」のはセオリーの1つであり、「激戦区だからこそ人が集まるだろう」というマーケティングに基づいて新設されたドラマ枠と言っていいでしょう。 では、なぜ日本テレビ系とテレビ朝日系のドラマ枠が苦戦傾向なのか。
ショートコンテンツもライバルに
もともと日曜夜は「翌日からの仕事や学校に備えて外出しない」「何かを積極的にするというより、何かを見て寝るだけ」という人が多いと言われる時間帯。ドラマの視聴としては、「心身ともにアクティブかつポジティブな平日夜や休日前夜の放送より期待できるのではないか」という考え方がありました。 実際、その傾向こそ変わってないものの、近年はドラマの作品数が増え、TVerなどでも気軽に見られ、スマートテレビの普及も進んでいることから、「他の曜日に放送されたドラマを日曜夜に配信で見る」という人も増えたようです。「日曜夜はドラマを見る日」というイメージは変わっていなくても、その作品は日曜に放送されているものとは限らないため、思うような結果につながらないのでしょう。 また、動画配信サービス、YouTube、SNSのライブ配信などのネットコンテンツが増えたことも見逃せない影響の1つ。日曜22時台はテレビドラマだけの激戦区ではなくなり、むしろ「ネットのショートコンテンツのほうが気軽に見られる」という人が少なくないのです。 これまでのマーケティングが通用しなくなっている以上、各局に求められるのは、「リアルタイムで見てもらえない人には別の時間帯でもいいから配信で見てもらう」ための戦略。今も視聴率獲得に基づくビジネスモデルは変わっていないものの、再生数などに応じた配信ビジネスも進めているだけに、それをいかに増やしていくのか。 もちろん視聴率の獲得は必要ですが、それだけでなく「日曜夜に放送されている作品」というブランドイメージを生かしてネット上で集客し、実績をあげていくことが必要でしょう。 日曜夜は23時台の『坂の上の雲』(NHK総合、再放送)も含めると、7作ものドラマが放送されているため、もはや飽和状態。リアルタイム視聴だけにこだわり続けると共倒れに終わるリスクがあるだけに、視聴率獲得以外の収入源をいかに作るかが重要になっていくでしょう。 【木村隆志】 コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。