「手取りを増やす」政策とは? 所得・ガソリン減税が焦点
衆院選で議席を伸ばした国民民主党の「手取りを増やす」政策が注目を集めている。少数与党に転落した自民、公明両党は経済対策の策定や来年度予算編成をにらみ、国民民主の主張を取り入れざるを得ないと判断し、政策協議を持ち掛けた。国民民主は、所得税やガソリン税の減税を柱とする公約の実現を迫る。 ―所得税減税の手法は。 国民民主は「控除」の拡大を提唱している。控除とは、年間の収入から課税対象額を算出する際に一定額を差し引く仕組みのこと。納税者の世帯構成や収入など、事情に応じて適用される控除の種類や額が異なる。 ―どの控除を拡大するのか。 現在、年間所得が2500万円以下ならすべての納税者が受けられる「基礎控除」が最大48万円。会社員らが対象の「給与所得控除」は最低額が55万円で、勤め人の場合は通常、年収が二つの控除の合計額103万円を上回ると所得税がかかる。この額を引き上げるよう国民民主は主張している。 ―なぜこの二つ? 所得税がかかると手取りが減るため、特にパート従業員はそれ以上働くのを控えてしまいがちだ。これが「103万円の壁」と呼ばれる現象で、国民民主は家計収入が増えない一因だと問題視した。所得税がかかるようになる年収を178万円に引き上げるよう求めている。 ―178万円の根拠は。 現在の103万円に引き上げられた1995年以降の約30年で、最低賃金が1.73倍に上昇したことからはじき出した。国民民主の試算では、控除額を一律に75万円引き上げれば、年収が500万円の世帯は約13万円減税され、物価高に苦しむ家計の助けになると訴えている。減税額は、所得税の適用税率が高い高所得者ほど大きくなる。 ―ガソリン税の減税とは。 ガソリン価格の上昇が一定以上続いた場合、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」と呼ばれる仕組みがある。東日本大震災の復興財源を確保するため、現在は発動が凍結されているが、国民民主はかねて凍結解除を求めてきた。 ―ガソリン税はいくら下がるのか。 1リットル当たり25.1円の課税が中止される。ただ、値下がりすれば再開されるため、価格が大きく変動し、ガソリンスタンドや消費者が混乱する恐れがある。自公と国民民主は岸田政権下で2回協議したが、凍結解除には至らなかった。 ―減税による財政の負担は。 所得税の控除拡大で、政府は国と地方を合わせて年間で約7.6兆円の減収になると試算している。トリガー条項の凍結解除は約1.5兆円の減収が見込まれ、借金頼みの財政の悪化に拍車が掛かると危惧される。