<万里一空・彦根総合23センバツ>支える人/2 中馬越三郎寮長 自由縛らず自主性促す /滋賀
彦根総合の校内にある寮「松隆館」は宮崎裕也監督(61)のある思いから他校の寮と比べ、ルールは厳しくない。その寮の管理を任されるのが、中馬越(なかまごえ)三郎寮長(76)だ。 昨年12月に松本隆理事長(78)から寮長を頼まれるまで、理事長が経営者だったねじ製造会社に勤務していた。 松隆館には野球、サッカーなどの部員約60人が生活する。寮の清掃が中馬越さんの主な仕事だ。グラウンドの黒土は取れにくく、床をぞうきんで時間をかけて拭くほか、ドアなどの修理もする。 建物はWi―Fiが完備され、各部屋にユニットバスを備えるなど設備は充実している。スマートフォンなどの持ち込みに制限はなく、門限はあるものの外出も可能だ。最初は自由さに戸惑ったが、宮崎監督に「生徒を縛り付けて厳しくすることはできるが、問題が起きればその都度、生徒らで考えて解決する方が社会で通用する人間になる」と言われ、その思いに共感した。 自身も「あいさつと整理整頓はできないと社会で困る」との思いから寮生に細かく注意してきた。さらにセンバツ出場が決まってからは自覚を持ってほしいと考え、起床時間に選手らを起こすことをやめた。選手たちにも変化が生まれ「今まで玄関の靴がバラバラで自分がそろえていたが、そろうようになった」。武元駿希選手(2年)の父伸也さんも「家に帰ってきて靴がそろっていたのが一番びっくりした」と喜ぶ。 中馬越さんは「甲子園では勝負も大事だが、見られていることを意識して身の回りのことをきちんとこなしてほしい」とエールを送る。【飯塚りりん】