日本ダービーには「セオリー」がある――穴党記者が激走を期待する2頭の伏兵とは?
そうして、松田記者はこの条件を満たす馬がジャスティンミラノを脅かす存在と見て、2頭の穴馬候補をピックアップした。 「まず注目したいのが、皐月賞で4着だったアーバンシック(牡3歳)です。今年の皐月賞でメンバー最速を上がりタイムを記録したのは、6着レガレイラと7着エコロヴァルツ(牡3歳)ですが、2頭の次に速い末脚を繰り出したのがアーバンシック。4角で外へ持ち出して、豪快に伸びてきました。 2走前には、皐月賞と同じ舞台のGIII京成杯(1月14日/中山・芝2000m)で2着。その際、内に体を倒しながら伸びていたのが気になっていましたが、皐月賞ではその修正が図れていました。 皐月賞の前、管理する武井亮調教師は『センスはいいけど、応用力がない』と話していて、当時はいろいろな経験を重ねつつ、少しずつ学習を進めている状況でした。隊列の先頭でキャンターを走らせたり、自立心を養う調教を課したりしていました。 それが今、(皐月賞の)疲労が抜けてからは、調教では折り合いを含めて心身のバランスがとにかくいいです。この中間から使用しているクロス鼻革の効果もあってか、武井師も『状態はしっかり上がっています』と上積みを強調していました。 昨秋の1勝クラス・百日草特別(11月5日/東京・芝2000m)で記録した走破タイムは1分59秒4。その勝ちタイムと後半1000m58秒6という数字は、2歳戦では滅多に見られない優秀な時計とラップです。 身体能力は3歳トップクラス。武器となる末脚勝負に徹することのできる東京に舞台が替わるのは、同馬にとってプラスに働くと見ます」
松田記者が推奨するもう1頭は、コスモキュランダ(牡3歳)だ。 「GII弥生賞(3月3日/中山・芝2000m)は6番人気で勝利し、皐月賞も7番人気ながら2着と好走。走っても、走っても人気にならない不思議な馬で、それだけの実績をもってしても、おそらく今回も伏兵の域を出ないでしょうが、同馬を管理する加藤士津八厩舎の伊藤祥徳調教助手は、『距離延長も(コースが)東京に替わるのもいい』と、ダービーの舞台設定を歓迎しています。 キャリア8戦は出走メンバー中2番目に多い経験値。一時は出負け気味の競馬が続いていましたが、地道なゲート練習などもあって、皐月賞では中団でしっかり流れに乗っていました。 ダービーに向けても、『中間はリカバリーもできている。皐月賞でジョッキー(ジョアン・モレイラ騎手)がこの馬の持っているもの以上を引き出してくれた。あの競馬をこなして、馬が一段上がった感じ。自分から動いても競馬ができるし、中団から前目の競馬でレースを動かしていくくらいの気持ちで走れれば』と、伊藤助手は手応えを感じているようでした。 外をまくっていった弥生賞がレースレコードでの勝利。持続力のある末脚が持ち味です。底力を問われるダービーでも、その強みを存分に発揮できれば、再度の激走があっても驚けませんよ」 ホースマンにとって、夢舞台である日本ダービー。今年も熾烈な争いになるのは間違いない。その白熱のレースにあって、ここに挙げた2頭がアッと驚く走りを見せても不思議ではない。
土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu