北陸新幹線金沢~敦賀間前倒し開業の方針、その背景と理由は?
政府・与党が北陸新幹線の金沢~敦賀(福井県)間の開業を3年前倒しして2022年度にする方針を決めました。さらに福井駅までの先行開業も検討されることになっており、地元福井県の西川一誠知事は「福井先行開業は、政府・与党において、しっかりと議論を深めていただきたい」というコメントを発表しています。福井県にとって福井駅までの早期開業は念願でしたが、どのような背景があるのでしょうか? [動画で分かりやすく]2015年春に延伸開業 「北陸新幹線」ってどんな新幹線?
北陸3県の間に格差が生じる恐れ
北陸新幹線は3月14日に長野~金沢間が開業します。しかし、目と鼻の先の福井までは届きませんでした。かねてから地元経済界などが金沢~福井間の3年前倒し開業について、地元選出国会議員を通じて国土交通省や与党などに強く要望してきており、その熱意がようやく実を結び始めた形です。衆議院解散前の11月には、太田国土交通大臣が「解散とは別に今回の予算編成で決着させたい」と発言しており、予算編成作業のなかで最終決定させるとみられます。 北陸新幹線が金沢まで開業すると、金沢は東京との行き来に1時間以上の時間短縮効果があります。これに対して、東京~福井間は、東海道新幹線の「ひかり」で米原駅まで行き、同駅で特急「しらさぎ」に乗り換えるというのが通常のルートで、現状の所要時間は約3時間25分。北陸新幹線が金沢につながっても時間短縮効果は10分程度と見込まれていて、実は時間短縮効果は限定的です。 福井と東京がつながると時間短縮効果は約35分。福井県が前倒し開業にこだわる理由の一つに、先行して開業される石川・富山両県と福井県の間に格差が生じるのではないかという懸念があります。2015年に新幹線の駅が開業する金沢では、商業施設が新たにオープンし、地価の下げ止まりも伝えられ、開業効果が見え始めていると同県では分析。「金沢に今後さらに経済活動が集中すると、福井から消費や経済機能が流出しかねない」と言うわけです。 これといった産業がない地方にとっては、地方の人口減少対策、経済対策は喫緊の課題です。敦賀延伸による開業後の経済波及効果は、北陸全体で960億円(金沢までの開業なら400億円)、福井県だけで260億円(同40億円)と試算されており、福井という地域のブランディングを北陸3県とともに進めて行くことが課題になるでしょう。 敦賀までの開業が2022年度に見通しがついたことは、地元にとって喜ばしいことですが、これでは2020年に開かれる東京オリンピック・パラリンピックには間に合いません。西川知事は「最低3年の前倒し」と表現しており、東京オリンピックまでに福井駅までの先行開業を取り付けるということが次のゴールになります。