小学生の息子を映画館に残し「1人で先に帰った」夫。問い詰めたら“言葉を失う返答”が<漫画>
40代で若年性認知症を患った夫を支える妻を描いたセミフィクション、『夫がわたしを忘れる日まで』(KADOKAWA)。 【マンガ】『夫がわたしを忘れる日まで』を読む 著者の吉田いらこさんは、自身の父親が脳に障害を負う経験をされており、本作はその経験を元に描かれています。 こちらの記事では、映画館に小学生の息子を残し「1人で先に帰った」夫のエピソードが含まれる4~6話を紹介。執筆のきっかけや、若年性認知症の患者さんや家族の困りごとを聞いた前回に引き続き、吉田いらこさんに、家族の介護の悩みや、病気になったことで職場で周りの人に迷惑をかけてしまう辛さなどについて今回は聞きました。
悩みを打ち明けた友達の反応
――作品中で、主人公が夫の病気について誰にも相談できないという描写がありました。当事者としては、打ち明けにくいものなのでしょうか? 吉田いらこさん(以下、吉田):私自身なかなか周囲の人に言えませんでした。一度、高校の部活の友達に話したことがありましたが、友達は言葉を失っていてすごく引いていましたね。 その様子を見て「これ以上は負担をかけるから話してはダメだ」と思って途中で止めました。 ――もし悩みを打ち明けられたら、どんな風に話を聞けばいいと思いますか? 吉田:ただ「うんうん」と話を聞いてもらえたら、それが1番いいのではないかと思います。昔の彼氏に打ち明けたとき「俺はもっと大変な人を知っている」と言われたこともありました。 これはダメな感じの人と付き合ってしまったなと思いました(笑)。 ――主人公が同僚に悩みを打ち明けたとき、同僚が介護の経験から主人公の悩みに寄り添ってくれていたのが印象的でした。 吉田:漫画を発表してから色々なメッセージをいただくようになったのですが、私に似た体験をした方が沢山いらっしゃったんです。 その方達の「私はこうやって受け止めていました」というお話しを参考にしました。介護を経験された方のお話しは「父の看護と似ている部分があるな」と共感しましたし、私よりも余程辛い環境で介護をされている方がいることを知りました。