AI記者が記事を書く時代(上)見えてきたAIの「得手不得手」
THE PAGE
米国のAP通信など、AIを用いた記事生成に取り組むメディアが現れています。国内では、中部経済新聞が歴史を振り返る記事を作成したほか、日本経済新聞が1月から企業の決算情報を要約し、文章化するサービスを開始しました。編集の現場では「AIの活用が広がれば記者の負担が軽くなる」と期待を寄せています。
中部経済新聞は名古屋市を中心に東海・中部地方の経済情報を掲載するブロック経済紙です。2016年11月、創刊70周年を迎え、「新聞として何か新しい価値を提案したかった」とAI記者による記事作成プロジェクトを同紙の竹尾文博東京支局長(42)が発案しました。 同社のAI記事のサイトにアクセスすると、人間の脳と機械が融合したモノクロ画像の上に「この記事、AI記者が書きました。」の文字……。スクロールすると、約650字の記事がこんな書き出しが現れます。 「中部経済新聞」は昭和二十一年十一月一日、焦土とかした市街地にはなお瓦嘩の山がうず高く残る名古屋市内で創刊いたしました。価値観の大転換が迫られる中で、中部の産業経済が大きく立ち上がるためのオピニオンリダーとして……」 冒頭で戦争の傷跡が残る創刊当時の情景を振り返り、高度成長期や石油ショックといった試練を乗り越えてきた中部企業をたたえ、今後も「未来像を指し示す努力を続けていく」と結んでいます。「瓦礫」とするべきところ「瓦嘩」と勝手に言葉を作ったり、「リーダー」を「リダー」と表記したりしていますが、文章として意味が成立しているところは画期的と言えるでしょう。 中部経済新聞の依頼を受けて、AIのシステム設計を担当したのがウェブサイト制作会社「ビットエー(BITA)」 (本社・東京都港区、橋本和樹社長)です。 AIがどうやって記事を作ったのか、流れを追っていきましょう。 まず、中部経済新聞の過去記事や同社の歴史に関する文章を含む数万件を学習させます。 次に人間が記事の構成を決め、全体をおよそ10のブロックに分割します。分割したブロックごとに文章を生成させるため、AIに書いて欲しい中身を「中部経済新聞は昭和二十一年、創刊」など、10文字程度で端的にまとめて入力します。 指示を受けたAIは、学習データを活用して文章の中身をふくらませて、数十~100字前後の文を出力します。これにかかる時間は約10分。 出力された文章に対して、別のAIが「中部経済新聞の記事らしさ」の度合いを判定します。文章の 「らしさ」は、よく使われる「言葉」と「言葉」、「書き出し」と「結末」の組み合わせや、「言葉」の登場率などを判定基準にしました。 らしさ判定の結果は、文章を作成する方のAIに学習させ、再び文を出力。これを繰り返してブロックごとに複数の案の中から、最終的に中部経済新聞側が自社の記事らしい文を選んで組み合わせました。