内田氏の理事辞任でも日大が踏みにじろうとしている関東学連の温情裁定
大塚学長は5月25日の会見で「関東学連の裁定を待っている。ただ部活動の永久停止というようなことは考えていない。彼らにはできるだけ早い時期で、活動を再開してもらいたい」と語っていたが、その言葉は嘘だったということになる。自らが活動再開が遅れるようなスケジュール設定をしたのだ。 個人的には、3年生の当該選手を内田前監督、井上前コーチから守れなかった4年生にも連帯責任はあり、最低1シーズンの出場停止のペナルティは負うべきだと思うが、大塚学長も、こんな言動不一致の矛盾した行動をとるのならば、端から「できるだけ早く」とは発言せずに「最低1シーズンは自主的に謹慎すべきだと考えている」とでも発言しておくべきだったのだ。 うがった見方かもしれないが、この学長は教育者として学生を最優先に考えているような発言を繰り返しているが、実のところ最優先に考えているのは学生ではないのではないか、と考えてしまう。 第三者委員会の結論を先延ばしにすることで、時間を稼ぎ、事態を沈静化させ、これ以上田中理事長にまで非難が及ばないようにと画策しているのだろうか。関東学連が「指導者の反則行為の指示」を事実認定した上で、“本当に悪いのは指導者で学生側に罪はない”との“大岡裁定”を出したが、日大の姿勢は、その温情裁定を踏みにじるようなものだ。 本当に残された学生のことを考えているのならば、6月中に第三者委員会の報告を行い、その結論を踏まえ7月中に新しい体制でスタートを切り、9月の開幕に間に合うスケジュールで関東学連の検証委員会の裁定を待つべきだったのだ。 関東学連の科した処分は、1シーズンになっているが、こうなった以上、来季以降の復帰に関しても解除条件と同じ条件をつけるべきだろう。 また第三者委員会の委員長には、元広島高等検察庁の検事長である勝丸充啓氏が就き「委員選任は委員長に一任した」とされているが、その構成メンバーにも驚いた。委員長も含め7人のメンバー全員が弁護士なのだ。民事、国際関係に強い芝綜合法律事務所から3人、指導者2人が刑事告訴されているため、刑事訴訟の専門家もいるようだが、日弁連の第三者委員会のガイドラインには「事案によっては、弁護士だけでなく、学識経験者、ジャーナリスト、公認会計士などの有識者が委員として加わることが望ましい」とある。 今回は、特にアメフットというスポーツの試合中に起きた問題で、非常に専門性の高い事案である。関東学連は「経験値にもとづいて」判断したことを明らかにしていたが、アメフットの競技性に詳しい専門家が一人も委員に入っていないことで、関東学連の「監督、コーチから反則指示があった」という事実認定を彼らが覆す危惧もある。なぜ委員にアメフット、学生スポーツに関して詳しい、学識経験者、ジャーナリストという専門家を入れなかったのか、という疑問は残る。前にも書いたが、第三者委員会が必ずしも正しい結論を導くとは限らない。疑いの目をもっておいた方がいい。 それにしても日大は、一体いつになれば誰もが納得するような対応、対策を取るのだろうか。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)