「未利用魚」活用広がる 射水のレストラン、「エソ」で仏料理 小さい、骨が多い、実はうまい
水揚げされてもサイズが小さかったりするなどの理由で消費者に届けられない「未利用魚」を活用する動きが、富山県内で広まっている。漁業・養殖業の生産量が減る中、資源の有効利用への期待が高まっているためで、射水市内のフレンチレストランが地元の漁師や学生の協力を得て、未利用魚を使ったコース料理の開発を始めた。来年1月の提供開始を目指す。 【写真】エソを使用した料理の試作品 未利用魚の料理を開発中のフレンチレストランは、新湊漁港の新鮮な魚が味わえると評判の「Sazan」(射水市海竜新町)。従業員の松尾良枝さん(52)が、知人で漁師の八ツ橋佳太さん(40)から「せっかくの魚が捨てられるのはもったいない」と相談されたのがきっかけとなった。 松尾さんは、海とまちが近い「魚どころ・富山」の魅力や、水産業の実情を若い人に知ってもらおうと、富山高専のアントレプレナー研究同好会にも参加を打診し、3者でコース料理づくりを行うことにした。 話し合いの結果、味は良いものの、ロットが小さいうえに骨が多く、ほとんど利用されない魚「エソ」に着目し、複数のメニューを考案することを決めた。釣り人に釣れても喜ばれず、「外道」ともやゆされるエソだが、八ツ橋さんは「上質の白身で癖がなく、実はうまい」と話し、松尾さんも「調理は大変だが、多くの人に『おいしい』と言ってもらえるポテンシャルがある」と意気込む。 ●「宝庫」の富山湾 「天然のいけす」と呼ばれる富山湾は、暖かい対馬海流と冷たい深層水で満たされ、暖流系と冷水系の両方の魚が生息する。海の生物多様性は高く、約500種の魚がすむとされ、見方を変えると「未利用魚の宝庫」とも言える。 県内では昨年、射水市の水産加工物販売「IMATO」が、ロットやサイズが出荷に適さないマイワシやマグロ、ブリを梅干しの漬け汁で加熱し、真空パックにして商品化した。「梅魚(うめうお)」の名前で、県内の道の駅などで販売し、観光客らの人気を集める。シイラのポン酢しょうゆ漬けの販売も始めた。 氷見市でも、氷見高と市民グループが連携して未利用魚の加工品をつくる取り組みが進む。 ★未利用魚 水産物の流通過程において、魚体のサイズがふぞろいであったり、漁獲量が少なくロットがまとまっていなかったり、調理が面倒だったりする理由から、廉価でしか評価されない魚。成分や味、色、形、鮮度の急低下などで未利用魚と扱われる場合もある。