【新紙幣を完全解説】世界初の3Dホログラムで偽造防止、キャッシュレス化のなか新紙幣の効果とは
■ 福沢諭吉から渋沢栄一に、肖像はどうやって決まる? 現行のお札は、1万円・福沢諭吉、5千円・樋口一葉、千円・野口英世です。7月3日に始まる新紙幣では、1万円・渋沢栄一、5千円・津田梅子、千円・北里柴三郎となります。 では、お札の肖像はどのように決まるのでしょうか。国立印刷局の資料などによると、(1)日本国民が世界に誇れる人物で、教科書に載っているなど一般によく知られていること、(2)偽造防止の目的から、なるべく精密な人物像の写真や絵画を入手できる人物であること――の2点を軸に決めていきます。当時の麻生財務相は、これら2点に加え、「品格のある顔がふさわしい。軍人や政治家でない、明治以降の文化人や経済人から選んだ」と説明しています。 1万円札の新たな顔となる渋沢栄一は「近代日本経済の父」と呼ばれ、明治時代に日本経済の基礎をつくり上げた人物です。郷里は埼玉県深谷市。明治維新の前年、27歳で幕府の欧州視察メンバーに選ばれ、パリの万国博覧会を視察しました。 そのとき、日本の近代化には合理的な経済の仕組みが必要だと痛感し、帰国後は日本初の株式組織を静岡で設立。大蔵省の官僚としても活躍しました。 退官後は実業家となり、第一国立銀行(後の第一銀行、現・みずほ銀行)、東京商法会議所(現・東京商工会議所)、東京証券取引所などを設立したほか、公共事業や教育機関、研究機関などの設立にも深く寄与しています。生涯で設立に関わった企業は約500社、学校や公共事業は約600にも上るといわれています。 2021年には渋沢栄一が主人公のNHK大河ドラマ「青天を衝け」が放送されたため、親しみを感じる人も多いでしょう。 新1万円札の裏面は、赤レンガ駅舎として親しまれてきた歴史的建造物の東京駅(丸の内駅舎)です。
■ 5千円札は津田梅子、千円札は北里柴三郎 5千円札の新しい顔は、津田塾大学の創設者として知られる津田梅子です。裏面は古事記や万葉集にも登場し、古来より親しまれてきた「藤(フジ)」が描かれています。 津田梅子の父は徳川幕府の公式通訳。梅子自身も幼少時から英語に親しみ、6歳で日本初の女子留学生として米国に渡り、11年間を米国で過ごしました。帰国後は華族女学校の教授となったものの、広く女性の地位向上に尽くしたいと考え、再度、渡米しました。そして帰国後の1900年には念願の「女子英学塾」(現・津田塾大学)を創立。生涯にわたって女性教育に尽力しました。 千円札の北里柴三郎は、明治時代に医学の分野で数々の功績を残しました。「近代日本医学の父」と呼ばれる人物で、1989年に世界で初めて破傷風菌の培養に成功。翌年には破傷風菌の毒素を中和する抗体も発見し、世界で初めて「血清療法」を確立させました。 ジフテリアや狂犬病の予防などにも尽力したほか、香港でペスト菌も発見します。また、自身の研究だけでなく、国立伝染病研究所や慶応大学医学部の創設などにも奔走し、教育者としても多大な実績を残しました。 千円札の裏面は、江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の「富嶽三十六景」から名作「神奈川沖浪裏」が描かれています。