【高校サッカー選手権】王者・奈良育英、一条を下し4連覇に王手
11月3日、第103回全国高校サッカー選手権奈良予選の準決勝2試合が橿原公苑陸上競技場にて開催され、4年連続の全国切符を狙う王者・奈良育英が、5年ぶりの決勝進出を目指す一条を4-1で下し、昨年と同カードとなる生駒が待つ決勝へと駒を進めた。 【フォトギャラリー】 一条 vs 奈良育英 苦しみながらも、4年連続の決勝進出を決めた。梶村卓監督は「自分達自身でやるという所を見せてもらいたかった」と、試合の入りを選手の自主性に任せたが、「まだまだ甘い。色んな事が中途半端だった」と辛口で振り返った。梶村監督が指摘したのは、前半18分の失点シーン。一条にカウンターを許し、奪われたコーナーキックからMF小西陽仁(3年)に先制点を許した。「自分たちがちゃんと(準備して試合に)入れていないというのが失点に現れている」(梶村監督)と、攻守に不用意さが目立つ立ち上がりとなった。 失点後の監督のゲキがきいたのか、落ち着きを取り戻した奈良育英イレブンは反撃に転じる。キーマンとなったのは、エースストライカーのFW藤川陽太(3年)だ。2トップを組むFW堀大輔(2年)の強さを上手く活かしながら、自身はスピードを生かしてスペースに走り込むプレーで一条DF陣を翻弄。前半37分には、ペナルティエリア前でボールを受けると、DFを引き付けながら中央にカットイン。相手を振り切ると、そのまま左足を一閃して、同点ゴールをあげた。直後の前半40分には右サイドでのドリブル突破からのクロスで、MF森嶋大琥(2年)の得点をアシスト。エースの大車輪の活躍で前半のうちに逆転を果たした。 流れを引き込みたい両チームは、それぞれハーフタイムに策を仕掛ける。一条は攻撃陣をテコ入れし、MF佐野健人(2年)のポジションをFWに変更。前線から圧力を強めると、奈良育英は「相手に中盤で拾われていたところがあったので、あそこでうちの流れに持っていきたいという意図」(梶村監督)で、MFを大胆に2枚替え。中盤を制圧しにかかる。そのまま流れを掴んだのは奈良育英。プレーメーカーのMF有友瑠(3年)を中心に中盤でのボールを保持しはじめると、後半6分には森嶋がPKを決めて追加点。78分には交代出場のDF平原颯大(3年)がダメ押し点を奪い、勝負を決めた。 頼れるエースが試合をひっくり返した。苦しい展開の中での先制点に藤川は「チームメイトが繋いでくれるチャンスを決めきろうと試合前から思っていた」と力を込めた。悔しい気持ちを力に変えて成長してきた。総体予選決勝の生駒戦では、再三チャンスを作りながらも決めきれず、0-2で敗戦。「あの試合は最後にパスを選んだり、ドリブルの途中で切り返したりしてしまっていた」と悔やむ。夏の間は横浜FCユースや桐生第一などの強豪と練習試合を繰り返しレベルアップ。「今は相手の懐に潜って、シュートを打つというのを意識している。そこは成長できたんじゃないかと思います」と、手ごたえを口にした。 藤川の成長に梶村監督は、「夏を超えて圧倒的に伸びた。起点になり、点も取り、雰囲気も作りトータルでチームを活性化してくれている」と目を細める。先制点をアシストした森嶋も「やっぱりこのチームのエースストライカーだと思っています」と語るなど、チームメイトも全幅の信頼をおいている。 最後には「まだまだ自分たちの力を出し切れていない」と振り返った藤川。梶村監督も「奈良で勝つことが目標ではなく、全国で勝つことを見据えているので物足りない」と、自チームに求める要求は高い。決勝の相手は、3季連続で同じ顔合わせとなる生駒。直近の総体予選では敗れたが、「生駒に対する対策というよりは、(総体予選は)自分たちがやれていなかった部分があるので、そこをしっかりやっていこうと話してきました」(森嶋)と、気負いはない。4年連続の全国の舞台へ。王者は歩みを続ける。 (文・写真=梅本タツヤ)