高橋大輔が魅せたエンターテイナーの才 ダブルアクセルも披露し鍛え上げた肉体は芸術的
【かなだいが溶け合う新プログラム】 "パイオニア高橋"の進化は止まらない。 ショー後半、高橋は村元哉中と今季つくったプログラム『Birds/MAKEBA』で、アイスダンサーとして舞っている。リンクに響く蠱惑(こわく)的なボーカルに合わせ、村元とひとつに溶け合いながら艶やかに体を動かした。 それぞれ身のこなしが美しく、どこから活写してもさまになった。スローテンポをきれいに見せるには、筋肉の一つひとつまで思いどおりに動かせないといけない。 後半に入ってリズムが上がると、高橋はダンサーの力量を見せた。世界のトップテンに迫ったふたりの調和は美しく、ダイナミックなリフトも入った。 アフリカの部族が用いるような極彩色の上着とパンツの衣装、黒いシャツの隙間から見える鍛えた腹筋は、その躍動を引き立てた。野性的というか、アフリカの大地を匂わせ、心のままに、という解放感があった。 アイスダンサーとしての集大成だが、これも進化のプロセスのひとつと言えるか。
【雑誌の撮影で感じた経験値】 ーー雑誌『anan』で、アイスダンスでカップルを組んだ村元さんとふたりで表紙を飾りましたが、その感慨を教えてください。 その質問に、高橋は「難しいですね」とうなりながら、丁寧にこう答えている。 「(昨年5月の現役引退発表の)3シーズン前、哉中ちゃんと一緒にふたりでの撮影があったんですけど、その時はすごくぎこちなかったんです。それが今回は自然に、お互い何も言わずにスムーズにポーズがとれて。3年でいろんな経験をたくさんしてこられたんだなと、あらためて思いました」 ふたりの結成会見があった2019年9月、のちに「かなだい」と親しまれるふたりは初々しかった。「何かポーズをとってください!」というカメラマンの要求に対し、高橋はどぎまぎ。すでにアイスダンスの第一人者だった村元にエスコートされていた。 それが現役引退会見のフォトセッションでは、村元と息を合わせたリズムダンス『コンガ』のポーズを堂々と決め、動き出しそうな躍動感があった。 また、先日の『プリンスアイスワールド』公開練習後の取材では、自ら率先して盟友の小林宏一をリード。背筋の筋肉が美しくカーブを描き、太ももやふくらはぎの筋肉が上品に隆起し、芸術的ですらあった。 高橋は今も成長のアルバムを残し続ける。今回のアイスショーもひとつの転機か。探究者は模索し、生まれ変わる。 アイスショー『プリンスアイスワールド』東京公演は1月21日まで開催されている。
小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki