高橋大輔が魅せたエンターテイナーの才 ダブルアクセルも披露し鍛え上げた肉体は芸術的
【表現の幅を広げるエンターテイナー】 1月19日、東京・ダイドードリンコアイスアリーナでアイスショー『プリンスアイスワールド』東京公演が開幕した。ミュージカルとの融合で、ブロードウェイの世界を氷上に再現し、フィギュアスケートの可能性を示している。 【新着・写真】高橋大輔、村元哉中、宇野昌磨...「プリンスアイスワールド2023-2024」フォトギャラリー 「大人数でみんなと絡みながらやっていくというのは、むちゃくちゃテンションが上がります」 高橋大輔(37歳)はそう語っていたが、表現者の幅をさらに広げていたーー。 ショー前半のトリを飾る『Welcome to the Moulin Rouge Medley』のナンバーで、高橋は颯爽と登場している。 2005-2006シーズン、シングル時代に用いていた『ロクサーヌのタンゴ』に乗って、集まった観客を魅了。宣言していたとおりにダブルアクセルも成功させ、場内を盛り上げた。 「ソロで滑っていた時は、情景を思い浮かべながら滑っていたんですが。今回は前半に女性、後半には男性と絡んで、最後にみんながバッと出てくるのは同じ楽曲でも新鮮で。よりいっそうパワーを感じられて、すごく楽しかったですね」 高橋はそう振り返ったが、20年近く前に滑っていた曲を違った形に昇華させるところに、スケーターとしての歴史と技量を感じさせた。 終盤、高橋がひざをついて右手を氷にかざすと、氷が割れるような照明の演出になっている。音楽と光と一体になれるのは、エンターテイナーの才能だろう。 そこから華麗なステップを踏むたび、ひび割れは大きくなって、彼が手をかざすと、一斉に他のスケーターが飛び出す。曲の盛り上がりと重なる演出で、迫力を感じさせた。
【不可能を可能にしてきた軌跡】 高橋はいつも過去と今を結びつけ、未来をつくり出す。たとえば、アイスダンサーとしてのラストシーズンに『オペラ座の怪人』で全日本選手権優勝を果たしたが、それはシングル時代、2006-2007シーズンの世界選手権で初めてメダルを勝ちとった時のプログラムだった。 「(ミュージカルで一番印象的なのは)『オペラ座の怪人』で。何度見ても見入ってしまう。大好きで、自分にとっても特別なプログラムで。いつかスケート(の舞台など)で世界観を表現できれば最高だなと。難しいとは思いますけど、できたらいいなって常々思っています」 高橋はそう言うが、新たなバージョンの『オペラ座の怪人』も十分あり得るだろう。彼はそうやって不可能と思われたものを可能にしてきた。 シングル時代には、五輪メダル、世界選手権とグランプリファイナル優勝を日本男子として初めてもたらし、世界のフィギュアスケートの潮流を変えている。そして、2018年には4年ぶりに現役復帰を遂げ、全日本選手権2位の快挙。 さらに2020年からはアイスダンスに転向。関係者の下馬評をひっくり返し、世界の舞台で日本勢歴代最高のスコアをたたき出したのである。