電気自動車普及も裏目?減少率全国一 東京のガソリンスタンド過疎地化問題
都市に適した電気自動車の“ちょい乗り”需要も影響?
また、技術革新によって電気自動車が普及したことも、都市圏のSS過疎を加速させている要因です。ガソリン車と比べると、電気自動車は一回の充電で走行できる距離が短いという欠点があります。しかし、航続距離が短くても東京や大阪といった都市圏では“ちょい乗り”と呼ばれる、わずかな移動のみで使われることも少なくありません。そうした都市圏での“ちょい乗り”需要が、電気自動車の普及に一役買っています。それがガソリン車離れにつながり、都市圏のSS過疎地化に拍車をかけているのです。 2005年度から2014年度までの10年間、東京都では700か所以上ものガソリンスタンドがなくなり、減少率は37.9%にも及びます。これは、47都道府県ワースト1減少率です。
震災時で必要とされたガソリンスタンドが持つ「燃料基地」の役割
このまま電気自動車の普及が進めば、さらにガソリンスタンドは消失していくでしょう。ガソリン車が減っているのだから仕方がないと思われるかもしれません。しかし、ガソリンスタンドが果たす役割は自動車の燃料を補給するだけではありません。灯油販売や農業機械への給油といった役割も担っているのです。 「東日本大震災や熊本地震でも、ガソリンスタンドは燃料基地として大きな役割を果たしました。暖房器具や発電といった燃料全般において、ガソリンスタンドは重要な役割を有しています。ガソリン車が減少しても、ガソリンスタンドは必要不可欠な拠点であると考えています」(同)。 ガソリンスタンドを維持することは住民生活を守ることにもつながります。そうした視点から、地方自治体は補助金を出したり、経営を公営に切り替えるなどしてガソリンスタンドの支援に乗り出しています。本来、ガソリンスタンドは民間事業です。そのため東京や大阪といった都市圏では、自治体が公金を投じて維持するという機運は高まっていません。
経産省は経営多角化を奨励 カフェやコンビニを併設するところも
そうした状況を踏まえて、経産省はガソリンスタンドを維持していくために経営の多角化を積極的に奨励し、油外収入を増やすことを勧めてきました。これまでのガソリンスタンドは、タイヤ交換や洗車、保険の販売などで油外収入を拡大させてきました。最近は、カフェやコンビニを併設するガソリンスタンドが増えています。 「給油待ちの間にカフェでお茶をする、コンビニに寄るついでに給油していく。そうした併設店舗による相乗効果は、ガソリンスタンドの経営を安定化させます。ガソリンスタンドを維持していくためにも、経営の多角化は今後の課題と言えます」(同)。 カフェやコンビニを併設したガソリンスタンドは集客が期待できますが、どうしても広い敷地が必要になります。都市圏では、広い敷地を確保することがネックになって多角化が進んでいません。また、「仮に広い敷地があっても『儲からないガソリンスタンドを経営するより、マンションを建てた方が手っ取り早く儲けられる』と考える経営者や地主も多く、都市圏でもガソリンスタンドの廃業が深刻な問題になっています」(同)。 私たちが口にする食料品や手にする日用品は、トラックによって各店舗に配送されています。自動車による物流が、私たちの生活を支えていると言っても過言ではありません。年々、日常的に自動車を運転しない人は増えていますが、SS過疎地は自動車を運転しない人にとっても大きな影響を及ぼす問題とも言えるのです。 小川裕夫=フリーランスライター