<箱根駅伝>青学、初V理由は勧誘術と科学トレーニング
「トップを走ると力を発揮するもんだね。いや強いわ」。 まるで他人事のように原晋監督はつぶやいた。 箱根駅伝は青学大の圧勝で幕を閉じた。往路で2位に4分59秒差をつけると、復路では独走レースを完結させる。今大会から5区と6区の一部が変更したため新コースとなるが、総合タイムは10時間49分27秒。12年に東洋大が樹立した従来の大会記録を2分以上も短縮しただけでなく、後続には平成以降で最大となる10分50秒という大差をつけた。復路の5人は全員が区間2位以内(3人が区間賞)で、3区以降のすべての区間で大学記録を上回った。原監督が驚くのも無理はない。青学大の過去最高順位は5位で、トップを走ったことは一度もないからだ。 創部96年目と青学大陸上部の歴史は古いが、今回が7年連続20回目の出場だった。本格強化は原監督が就任した04年。09年の箱根駅伝で33年ぶりの出場を果たすと、翌年にはシード権を獲得した。そこから5年連続でシード権を守り、今季は全日本で過去最高の3位に入るなど、青学大はイケイケのチームだった。 登録選手の上位10人の10000m平均タイムは2位(28分48秒)。前年度の8位(29分03秒)から15秒も上げてきた。そこに「新・山の神」が出現。ダークホースだった青学大は、復路で一気に大本命となった。その快走劇は、フラッシュグリーンの襷のように、新春の箱根路に爽やかな風を吹き込んだ。 箱根駅伝を目指す大学が乱立するなかで、アオガクはいかにして強くなったのか。原監督はこう振り返る。 「就任11年目ですけど、本当にあっという間でしたね。苦労したのは最初の5年。箱根に初出場するまで。何事も土壌作りが大変ですから。軌道に乗ってしまえばそうでもない。重い球が転がった感じですよ。この数年間は案外ラクでした。特にこの1年間は一度も選手たちを怒ったことがない。他大学はマジメにやっているのに、オレみたいなやり方で優勝してもいいのかなと思うもん(笑)。朝食には毎日、差し入れの御菓子が出 るんだよ。さすがに箱根の10日前からやめましたけど」