球春到来で知っておきたい「球場の個性」【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第107回
いよいよ球春到来。応援するチームの本拠地に足を運ぶ機会も増えると思います。 球場で飲むビールは格別ですが、球場は日本全国どこでも同じではありません。ということで今回は、「球場の個性」についてお話ししたいと思います。 【写真】山本キャスターの最新フォトギャラリー かつて、阪神の本拠地である甲子園の名物といえば「ラッキーゾーン」と呼ばれるエリアでした。これはホームから見て外野席の手前、外野グランド内に柵を設けて、意図的にフェアゾーンを狭くしたもので、ホームランを増やす狙いがありました。 リーグ全体でホームラン数が増加した1990年代前半に廃止されましたが、その後、低迷する阪神の起爆剤として復活論が巻き起こったことも。ただ、逆に敵チームにも有利になるということで叶うことはありませんでした。ちなみに現在でも、ソフトバンクのPayPayドームには「ホームランテラス」と呼ばれるラッキーゾーンが存在します。 なぜ球場はそれぞれ違うのか。それは、球場は一定の規格さえ満たしていれば自由に設計ができるからです。球場によっては、ホームからの距離がレフトとライトで違うところもあります。 MLBだと、ヤンキーススタジアムはレフトに比べてライトが短く設計されています。ライトに引っ張る打球が多い左打者のベーブ・ルースが活躍していた当時、彼のホームランが出やすいように配慮された名残だとも言われています。日本では広島のMAZDA Zoom-Zoom スタジアムも、ほんの1mではありますがレフトのほうが長く設計されています。 1912年に完成したボストンレッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークは、MLB球場のなかで最も古い球場として知られていますが、こちらの目印はレフトにそびえる大きな緑色の壁。通称「グリーンモンスター」です。市街地の中ということで、建設の段階で建築に制限がかかり、ライトに比べてレフトが短くなってしまったことから、簡単にホームランが出ないように設置されたものです。 一見、投手が有利に思われますが、通常だとフライアウトになるような打球もこのフェンスに当たると問答無用でヒットになることから、打者はレフトに打球を飛ばすことが多くなります。一方で守備をする側の選手は、クッションボールの練習をたくさんするそうです。 シカゴ・カブスの本拠地リグレー・フィールドは、外野フェンスにツタが茂っています。打球がツタにからまった場合は、エンタイトル・ツーベースになります。ちなみにこの球場は、初代オーナーの「野球はお日様の下でやるもの」という心意気を継承し、80年近くナイター照明が設置されませんでした。1980年代後半に、デーゲームでは選手の疲労が大きくなることなどを考慮してついに設置されたものの、現在でもほかのチームと比べてデーゲームが多いです。