フレッシュマンや若手社員必見!コミュニケーションスキルの専門家に聞く、職場で使えるコミュニケーションと自己紹介とは?
新卒で人生初の会社に入ったり、転職や部署異動を通して労働環境が変わったりなど、節目ごとに訪れる新しい仕事仲間との出会い。一方で、良好な人間関係をイチから作り上げていく必要もあるため、コミュニケーション能力が必要とされる機会も多い。 「新人時代は、自分から積極的に話しかけることが大事です!」と松下さん このような際、どのようなコミュニケーションを図れば、仕事のしやすい関係性を作ることができるのだろうか。特に、社会人になったばかりのフレッシュマンにとっては、先輩や上司と仲良くできるかどうかは、働きやすさに直結すると言っても過言ではない。 今回はコミュニケーションスキルの専門家であり、書籍『「たった1人」に選ばれる話し方』や『未来をつくる!最高の自己紹介』などの著者として、コミュニケーションや自己紹介のノウハウを伝授しているアナウンサーの松下公子さんに、若手社員に向けた良好な人間関係の作り方についてインタビューを行った。 ■若い時こそ、先輩や上司に積極的なコミュニケーションを! ――社会人にとってコミュニケーションは重要なスキルですが、どうすれば上手に話せるようになるのでしょうか? 【松下公子】新社会人や若手社員の方々にとって、緊張せずに上手にコミュニケーションをとるのはすごくハードルが高いことです。「ちゃんと話せるかな」、「失敗しないかな」、「嫌われたらどうしよう」などと考えてしまうとなかなか自分の考えを表現できませんよね。ですが、新しい職場や取引先と話をするときは、つい自分をよく見せようとしてしまうじゃないですか。そのギャップが緊張を生み出してしまうのです。 【松下公子】コミュニケーションは一方通行のものではなく、人対人の相互作用で形成されるものになります。そのため、話す側が一方的に自分の思いや考えを伝えるだけになってしまうと、伝えたいことも伝わらなくなってしまいます。特に、職場であれば働く人同士の関係性がとても大事になってきますので、より相互理解の重要性が高まります。 ――どうすれば職場でのコミュニケーションがうまくいくのでしょうか。 【松下公子】職場におけるコミュニケーションでは、その時々に言いたいことを伝えるテクニックの向上よりも、常に上司や仲間と話し合える環境を作っておくことのほうが圧倒的に重要です。若手からすると自分でそのような状況を作るのは難しいかもしれませんが、逆に上司側からすると若い人たちの気持ちがわからないので、何かを言うにも気が引けてしまうのです。 ――上司や仲間と話し合える環境を作るには、どのような取り組みをすればいいのでしょうか? 【松下公子】常日頃からコミュニケーションをとることがとても大事です。例えば、旅行に行った際はみんなで食べるお土産を買っていったり、上司とお昼ご飯を食べながら雑談したりとかですね。特に、一緒に食事をとることは親近感や共感を作ることができるのでおすすめです。 【松下公子】やはり、職場のコミュニケーションで重要なのは日頃どれだけ話し合えて仲良くなれているのか、信頼関係を結べているかなのですよね。特に、年長者は自分から若い社員に話しかけるのが苦手な人も多いので、若手のころから積極的に話しかけていくことがとても大事だと思います。やっぱり、先輩方も一歩を踏み出すのには勇気が入りますからね。 ――若い社員に慕われるのがうれしいベテランの方もいますものね。 【松下公子】そうですね。だからこそ若手のうちは待ちに徹するのではなく、自分からガンガン、コミュニケーションをとっていくようにしましょう。すると、自然と良好な人間関係が構築されていきます。「旅の恥はかき捨て」ではありませんが、若いころは失敗をしても許されるので、“仕事の恥はかき捨て”で、どんどんアプローチをしていくことがおすすめです。 ■人間関係向上に大活躍!「褒める」ことの大切さ ――先ほどは積極的なコミュニケーションの重要性をお聞きしましたが、実際にはどのような話題が人間関係構築に効果的なのでしょうか? 【松下公子】話題については仕事の話はもちろん、趣味や興味のあることを聞くのも良いでしょう。そして、それらの話題を褒めることが非常に効果的です。褒められて嫌な人というのはそんなにいないので、些細なことでも「いいな」と思ったことを褒めるのがとても効果的です。例えば、「〇〇さんってすごく業務の整理が早いですよね!」や「△△さんってサーフィンできるのですね!すごい!」といった感じですね。 【松下公子】また、一番言いやすいのは服装や髪型といった見た目を褒めることですね。仕事のスキルや能力を褒めるのも良いですが、「僕なんてまだまだだよ」と思われる方もいるかもしれません。ですが、見た目は目に見える事実ですので否定されることはありません。また、褒め方は「センスがいいですね!」「おしゃれですね!」といったものよりも「すごくセンスが良いと思います」という言い方がおすすめです。 ――主観的な言い方での褒め方がベターなのですね。 【松下公子】その後、ある程度仲良くなったらその人の在り方や仕事への価値観を褒めるというのが次のステップです。例えば、メールの返信の早い人であれば、「〇〇さんってすごく返信早いですよね!どんなことを意識しているんですか?」といった感じですね。このようなことって人によって答えが違うので、その部分を深掘りできるようになると、関係性を一層深めることができるようになります。 【松下公子】褒めることって、最初はすごく勇気のいることだと思います。新入社員や若手のころって上司をすごく怖い存在に思うかもしれません。ですが、会社だって社員を目の敵にしたいわけではなく、仲間になれる存在だと思っているから入社させていることを忘れないでほしいですね。 【松下公子】また、新卒1年目の方に言いたいのは、会社で仕事をすることが初めてである以上、たくさん失敗して当然だということです。新入社員の失敗なんてたかが知れていますし、会社という組織があるからこそ思い切って失敗ができるのです。そして、失敗をフォローできるよう先輩や上司がいるのですから、彼らと円滑なコミュニケーションを図れるような環境づくりをすることが新入社員の仕事のうちですし、将来の自分への投資と言えますね。 ■松下さんイチオシ!若手ならではの「自己紹介」の流儀 ――転職や部署異動、新入社員の配属決定などで新しい職場環境になることもありますが、そのような際にはどのようにすれば良好な人間関係を築けるでしょうか? 【松下公子】そのような際には初日に自己紹介の機会があると思うのですが、自己紹介は好印象を与えられるだけでなく、その後の人間関係を良くするための大チャンスです。特に、新入社員にとっては人生初めての職場になりますので、ぜひこの機会に上司や先輩によい印象を与えたいという人も多いと思います。 【松下公子】自己紹介にはさまざまな方法がありますが、私がおすすめするのは「どう組織に貢献していくか」をはっきりと伝えることですね。若手の社員、特に新入社員はアピールできる仕事の実績が少なく、何を言ったらいいかわからないことも多いと思います。そのような際に、「一生懸命仕事をしていきたい」と未来に向けてやる気を表明することがベストではないでしょうか。 【松下公子】大学や前の職場でしてきたことを言うのはもちろんですが、自分の過去だけでなく「皆さんと働けることがうれしいです!一緒にがんばっていきたいです!」と、上司や部下に歩み寄っていくことを言えると、非常に好印象だと思います。もちろん、自分をよく見せようとするのも良いのですが、それ以上に職場の先輩や上司に歩み寄っていく姿勢を見せることが大事だと思いますね。 ――会社はチームだからこそ、その一員として活躍したいことをアピールできると好印象なのですね。 【松下公子】そうだと思いますね。私は著書の中でよく「2割8割の法則」ということを書いています。これは、自分のことを2割、職場での未来のことを8割話すのが良い自己紹介だということです。自己紹介でよくありがちなミスは、自分のことと会社のことを五分五分で言うことで、結局何が言いたいのかわからない内容になりがちです。 【松下公子】一方で、2割8割の法則で話すと、自分自身のことについて触れつつ、自分と職場、そしてこれから関わっていく仲間とのビジョンをしっかりと印象づけられ、バランスが良く内容も伝わりやすい自己紹介になります。また、会社での未来のことをメインに話すのであれば、聴く側も自分ごととして捉えやすいので、より言いたいことが伝わりやすくなりますね。 ――確かに、自分の将来にも関わることだと思えば、より親近感が湧きやすくなります。 【松下公子】そうですよね。だからこそ、自分の話をするだけではなく職場全体の話として自己紹介をするのがおすすめです。 ――また、取引先や営業先など、社外の人にはどのような自己紹介をすればいいでしょうか? 【松下公子】相手がどのような人かによって違ってくるとは思いますが、やっぱり「一緒に良い仕事をしていきましょう」とか、「一緒に目標達成しましょう」と、“一緒”というワードを使って仲間意識を持ってもらえるような自己紹介が望ましいです。社外の人であっても同じ仕事をこなしていく仲間ですからね。初対面という関係性がまだできていない状態ですので、とにかく「皆さんとやっていきたい」ということを口に出して、仲間として認めてもらうように努力することが大事です。 ■「若い時こそ、職場のコミュニケーションを大事にしてほしい」 ――最後に、フレッシュマンや若手社員に向けてメッセージをお願いします。 【松下公子】慣れない環境下で職場の人たちに「一緒にがんばりましょう!」とは簡単には言えないかもしれません。そして、新しい職場になじめるかどうか不安で、自信をなくしてしまうこともあるかもしれません。ですが、それらは新入社員や若手にとって当たり前のことなので、何も恥じるべきことではありません。 【松下公子】特に、新入社員のみなさんは入社試験をパスして選ばれているわけであり、「一緒にこの会社を盛り上げていきたい」「一緒の仲間として仕事をしていきたい」という会社側の意志のもと入社ができているので、そこは心から自信を持ってもらいたいです。社会人としての経験はこれから積んでいけるので、たくさん上司や先輩に甘えて、たくさん失敗して、たくさん成長してほしいですね。 ――これらすべては、若手ならではの特権ですね。 【松下公子】そうですね。結局のところ、自己紹介って自分のことをどう見ているかなんですよ。自分に自信がないとうまく話せないし伝えられない。けど、新しい環境だとまだまだ自信につなげられるものは少ない。そんな時には未来の自分や先輩、上司、そして会社に自信を持てばいいと思います。 【松下公子】あなただって立派な会社の一員ですからね。ですので、まずは堂々と「みなさんと一緒にがんばりたいです!」と言いましょう。そうすればそのやる気や積極性が認められる日がきっと来ますから。それまでに仕事仲間とたくさんお話しし、社内環境を良好にし、いつでも気軽に円滑なコミュニケーションを図れる場を作る。それが、フレッシュマンの第一の仕事です、ぜひ目の前の物事に一生懸命取り組み、より良いキャリアを築いてくださいね! 取材・文=越前与