在職老齢年金や65歳までの加入延長など「年金プロ」が注目する年金の【財政検証】
今年は5年に一度の公的年金の財政検証の年に当たり、年金制度についてさまざまな改正案が出ています。 【一覧表】国民年金の延長など、財政検証での議論内容とは?在職老齢年金制度もフローチャートで確認 老後生活に不安を感じている人の中には、どんな改正が議論されているか、気になる人もいるでしょう。 本記事では、年金のプロが注目する年金制度の改正案について解説します。 改定による影響についても紹介しますので、老後を支える公的年金の基礎知識として内容を確認しておきましょう。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
年金の財政検証
年金の財政検証とは、「公的年金の長期にわたる財政の健全性を定期的にチェック」することにより年金制度の持続可能性を担保するものです。 5年に一度実施され、2024年が財政検証の年に当たります。 財政検証では年金財政の現状をチェックするだけでなく、今後の年金制度改革の方向性も検討されます。 今回の財政検証では、次の改正などが議論されています。 ・被用者保険(厚生年金保険)の更なる適用拡大 ・在職老齢年金制度の緩和または廃止 ・国民年金加入期間の延長と基礎年金の増額 ・厚生年金の標準報酬月額の上限引き上げ など 上記の中から注目度の高い主な改正案について解説します。
在職老齢年金の改正案
在職老齢年金は、年金を受給しながら仕事をする人の老齢厚生年金の一部、または全部を支給停止する制度です。 制度内容と改正案について解説します。 ●在職老齢年金とは 在職老齢年金とは、基本月額(老齢厚生年金の報酬比例部分の月額)と総報酬月額相当額(給与収入の約1/12の金額)が50万円(2024年度、毎年更改)を超えると老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となる制度です。 支給停止となるのは50万円を超える金額の1/2です。 給与収入が多い人の中には、支給停止されない範囲まで収入を抑えて働く人もいます。 ●在職老齢年金は廃止? 2021年4月、政府は高年齢者雇用安定法を改正し、企業に対し「70歳までの就業機会確保」を義務付け(努力義務)ました。 少子高齢化が進む中、働き手を確保するために希望すれば高年齢者が働ける環境を整えることが目的の1つです。 一方、在職老齢年金制度は高齢者の就業を抑制する効果を持つため、在職老齢年金制度を廃止すべきという意見が出ています。 ただし、制度を廃止すると年金給付が増えるため、支給停止となる基準を50万円から引き上げるなどの制度緩和策も改正案の1つとして検討されています。