在職老齢年金や65歳までの加入延長など「年金プロ」が注目する年金の【財政検証】
国民年金の加入期間延長案
次に、国民年金の加入期間について現状と改正案について解説します。 ●現在は20歳から60歳 厚生年金加入者は70歳まで保険料を納付しなければならないのに対し、自営業者(第1号被保険者)や専業主婦(第3号被保険者)などの国民年金加入者の加入期間は、20歳から60歳までの40年間です。 ただし、40年間漏れなく保険料を納付しても、年金額は最大月6万8000円(2024年度、毎年更改)で老後の生活資金として不十分です。 ●加入期間を65歳まで延長 今回の財政検証では、国民年金の加入期間を40年間(20歳から60歳)から45年間(20歳から65歳)に延長することが検討されています。 保険料の納付期間が伸びる代わりに年金額は増額しますが、60歳以降も保険料を支払わなければなりません。 専業主婦や無職の人など収入のない人には、大きな負担が生じることになります。 主な改定案について紹介しましたが、次章では改正が実施された場合、年金の受給額などにどんな影響があるのかを解説します。
改定による影響
在職老齢年金や国民年金の加入期間が改正された場合の影響は次の通りです。 ●在職老齢年金が廃止されれば65歳以降も制限なく働ける 在職老齢年金制度が廃止された場合、給与収入が多くても支給停止されなくなります。 支給停止中の人の年金が満額支給されるようになり総収入がアップします。 また、支給停止にならないように収入を抑えていた人の中には、制度が廃止されれば思う存分働きたいという人もいるでしょう。 制度廃止によって給与収入が増えれば、次のメリットもあります。 ・給与アップにより将来の老齢厚生年金が増える ・給与収入で生活を賄えれば、繰り下げ受給して年金額を大幅に増やせる ●国民年金の加入期間延長で年金額アップ 国民年金の加入期間が延長されれば、60歳以降の保険料負担が発生する一方、将来の年金額がアップします。 保険料を漏れなく納付した場合、加入期間を5年延長したときの年金額は約1.125倍(=45年間÷40年間)の月7万6500円となります。 ただし、年金額は増えても老後生活を賄うにはまだ足りません。 長く仕事を続けるか、iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用するなどして事前に老後資金を準備するか、などの対策が必要です。