最低賃金 2024年度に最も引き上げられる都道府県は？…全国平均は51円増の1055円
社会保障のきほん
身近な「社会保障」に関するテーマを、Q＆A方式で分かりやすく解説します。 【図解】女性の働き方の変化を示す「L字カーブ」とは？
額は都道府県ごと
Q 最低賃金って何ですか。 A 企業などの雇い主が従業員に支払わなければならない時給の下限額のことで、国が定めています。正社員だけでなく、アルバイトやパート、派遣労働者など雇われて働く全ての人が対象です。月給の場合、1か月の労働時間で割って時給に換算して比べます。 Q 企業がなぜ自由に決められないのですか。 A もし、業績や景気の悪化を理由に賃金が低く抑えられたり、物価が上昇したのに賃金が据え置かれたりしたら、生活が維持できなくなります。賃金の引き下げによる企業間の不公正な競争を防ぐことや、働く人の暮らしを安定させることが目的です。金額は都道府県ごとに決められています。 Q どうやって決めるのですか。 A 厚生労働省の審議会が毎年度、引き上げの目安を示し、都道府県ごとに労働者や使用者の代表、学識者で作る審議会が検討します。地域の生活コストや賃金、企業の支払い能力などを考慮し、最後は各地の労働局長が金額と改定日を決めます。今年度は10月1日～11月1日に順次改定されます。 Q 改定後は何円になりますか。 A 最高額は東京都の1163円、最低額は秋田県の951円です。1000円を上回るのは8道県増えて16都道府県です。国の引き上げの目安は全国一律50円でしたが、これを上回る増額が地方を中心に相次ぎ、最大は徳島県の84円です。低水準のままでは人材が集まらず、最低賃金のより高い地域に人材が移ってしまう危機感があるためです。この結果、全国平均は51円増の1055円になります。国が目安を示すようになった1978年度以降、最大の引き上げ額です。
平均1500円目標
Q 今後も引き上げるのですか。 A 政府は「2030年代半ばまでのより早期に全国平均1500円を目指す」という目標を掲げています。ただ、最高額と最低額には、212円の開きがあります。物価などの地域差が縮小していることから、政府は格差是正も実現したいとしています。大幅に引き上げると、「人件費の負担増で中小企業が困り、雇用が減る」と心配する声もあります。企業の生産性向上の取り組みを支援したり、価格転嫁への消費者などの理解を求めたりしながら、引き上げを進める必要があります。
