「新参」の戦いは楽じゃない 電動システムはBYD譲り KGMトーレス EVXへ試乗
32万台の年間販売を目指すKGM
BYDにオラ、ルーシッド、フィスカー。広くない島国の英国へ、次々に新しい自動車ブランドが上陸している。いつか、臨界点を向かえるのではないだろうか。 【写真】「新参」の戦いは楽じゃない KGMトーレス EVXへ試乗 サイズの近い電動SUVは? (147枚) 2024年には、KGMも加わった。とはいえ、これはサンヨンの生まれ変わり。新体制のもと、価格価値に長けたSUVで市場を潤わせたいと考えているそうだ。2026年までに、全世界での年間販売数を32万台へ増やすという、野心的なビジョンも掲げている。 ちなみに、それは現状の3倍。一般的な選択肢の1つとして、KGMのプレゼンスを高める必要がある。その足がかりとなるのが、前回試乗した内燃エンジン版のトーレスと、今回ご紹介するバッテリーEV版のトーレス EVXだ。 ボディサイズは、全長4700mm、全幅1890mm、全高1720mm。競合モデルとしては、フォルクスワーゲンID.4やプジョーE-3008、トヨタbZ4Xなどが挙げられる。 駆動用モーターはフロントに載り、最高出力は206ps。リン酸鉄リチウムの駆動用バッテリーの容量は、73.4kWhある。いずれも、技術パートナーのBYDから供給を受けているそうだ。 急速充電能力は、145kWまで。KGMによれば、2000回の急速充電を繰り返しても、本来の70%の実用量は維持されるという。
既存イメージからの脱却を図ったデザイン
シルエットは、内燃エンジン版のトーレスと同じながら、バッテリーEV版ではフロントマスクが近未来感を強めている。6連のデイライトが特徴となり、ヘッドライトはシャープで精悍。ブランド・アイデンティティを高めるうえで、夜間の主張も大切だ。 車重は1915kgと軽くなく、前輪駆動だから、悪路性能に長けるわけではない。そのためか、内燃エンジン版のような、スキッドプレート風の処理もない。ルーフバーや、スペアタイヤを模したテールゲートは共通する。 直線基調のスタイリングは個性が濃く、アウトドア感が強い。プロポーションも悪くなく、ブランドの再出発を牽引するモデルとして、見た目の印象は良いように思う。 ただし、他のモデルから借用したと思しき処理も少なくない。色が違うリアピラーやテールライト、フロントグリルの造形には、アイデア元となった既存モデルが思い浮かぶのではないだろうか。 インテリアは、従来のイメージからの脱却が強く意識された部分。ダッシュボードやセンターコンソール、ドアパネルなどが、統一感あるデザインでまとめられている。 メタル風トリムでアクセントが付けられ、手に触れる部分は合成皮革で覆われるなど、素材の質感も低くない。とはいえ、パネルを指でコツコツと叩くと、安っぽい音が響く。スイッチ類の触感も、価格にふさわしいとはいえないだろう。 ステアリングホイールはリムが細く、握った感じはハード。シートは、長時間を快適に過ごせるデザインとはいいにくい。