ホテルに商業施設…北海道で開業遅れ相次ぐ 需要過多に拍車、倒産リスク高まる建設業
北海道で人手不足や資材高騰を背景に、ホテルや商業施設などの建設、開業遅れが相次いでいる。今年に入り、次世代半導体の量産を目指すラピダスの工場建設が千歳市で本格化したことも需要過多に拍車をかけ、新型コロナウイルス禍から回復途上の道内経済に冷や水を浴びせかねない状況だ。建設業界は特需の一方、急激なコスト増に対応が追いつかず倒産リスクが高まっている。(共同通信=小川悠介) 星野リゾート(長野県軽井沢町)は2月、倶知安町につくる高級ホテル「星のやロッジ ニセコ(仮称)」の開業時期を2026年秋から2028年に延期すると発表した。 工場や高層ビルなど大型工事が集中し、資材や建機が逼迫(ひっぱく)しているといい、担当者は「建設コストが上昇し、準備が遅れている」と話す。 三菱地所は2024年に完成予定だった「ホテルオークラ札幌」(札幌市)跡地の新築ホテル建設を延期。札幌市によると、2023年4~9月の市内観光客数はコロナ禍前の2019年同期とほぼ同水準まで回復したが、同社も費用がネックとなり着工できずにいる。
「人手の確保がかなり厳しく、計画を見直している」。JR北海道の綿貫泰之社長は今年2月、札幌駅前のビル再開発が当初計画から最大2年遅れ、開業が2030年度にずれ込む可能性に言及。工期や規模を再検討し、今年4月以降に改めて発表する構えだ。 イオン北海道も工事を請け負う会社が見つからず、2024年度にも着工予定だった室蘭市の店舗移設が2027年度になる見通し。 本州と地理的に離れた北海道は、人材を集めにくく作業員不足が悪化しやすい事情がある。 工事需要が膨らむ陰で、建設業界の先行きを危ぶむ声も。帝国データバンクによると、2023年の倒産件数は8年ぶりに1600件を超えた。小規模業者が中心で、コスト上昇分を受注費に価格転嫁できないケースが目立つ。北海道でも約60件と前年の約3倍に増えた。 建設業は今年4月から時間外労働の上限規制が適用され、さらにコスト増が見込まれる。新型コロナ対策の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済も懸念材料で、情報統括部の箕輪陽介氏は「倒産リスクが一段と高まっている。工事の需給バランスは当面改善しないのではないか」と指摘する。