日本の「バブル崩壊」教訓が活かされない中国の政治的な事情
経済アナリストのジョセフ・クラフトが1月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。前年比5.2%増となった中国のGDPについて解説した。
中国GDP5.2%増、名目GDPが実質GDPを下回る
中国国家統計局が1月17日に発表した2023年の国内総生産(GDP)は、物価の変動を調整した実質で前年比5.2%増え、政府目標の「5%前後」は達成したが、ゼロコロナ政策で景気が低迷した2022年からの反動もあり、景気回復は力強さを欠く状況が続いている。 飯田)名目が実質を下回ったそうです。 クラフト)ポイントは2つあって、1つはゼロコロナ政策の反動で、ギリギリ政府目標を達成したのかという点。2つ目は、実質デフレの影響で押し上がっていることが大きいのではないかという点ですね。 飯田)中国国内の状況は相当景気が悪いのですか?
日本のバブル崩壊時に似ている中国経済の状況 ~日本も再びデフレ環境に引きずり込まれる可能性も
クラフト)悪いと思います。日本でも経験した90年代の不動産バブル、そのあとのデフレに非常に似ていて、中国もいま不動産の負債を返すため、家計が消費を極力減らしています。巷では2元パン(約40円のパン)が売れに売れているという話もあります。 飯田)安価なパンが。 クラフト)このまま不良債権処理に手をつけないと、日本のようにデフレが長期化するかも知れない。それは日本の例を見てもわかるので、政府としてはGDP目標を達成したからよしではなく、これを見て危機感を高めないと、長いデフレのトンネルから脱出できなくなる可能性があります。日本にとっても他人事ではありません。中国が長期的なデフレに陥ると、そのデフレが輸出されて日本にまたデフレ圧力が掛かり、日本も元のデフレ環境に引きずり込まれかねない。中国のみならず、世界にとって危惧される状況ではないかと思います。
目先の景気を底上げするため、日本のバブルの教訓を活かしていない
飯田)コロナよりもっと前だったと記憶していますが、デフレの輸出という意味で言えば、鉄鋼などが余って安いものが入ってきた。あれも一種のデフレ輸出のようなものですか? クラフト)まさにその一種ですね。いまの動きとしては中国への依存度、例えばサプライチェーンの依存度を減らしていこうという傾向があるので、うまくいけばある程度、中国からの影響は抑制できると思います。しかし、やはりアメリカと並ぶ2大経済マーケットですから、中国が風邪を引けば日本も風邪気味になることは間違いありません。 飯田)このデフレをどうするのか。日本の場合は長い時間が掛かりましたが、最終的には焦げ付いた部分を損として出すというようなことをやりましたよね。 クラフト)いま中国政府がすべきことは、地方政府が抱えている不動産の負債・不良債権を処理し、家計の負担を減らすことです。しかし、いまやっているのは逆で、また不動産需要を掘り下げようとして住宅購入の頭金を減らしたり、あるいは低金利ローンを提供しようとしています。それがさらに負債を増やしている状況なので、どんどん悪化していく。目先の景気を底上げするため、長期的なリスクを増やしているのが実態で、日本のバブルの教訓を活かしていません。