生命の起源について知っておきたい3つの仮説、「大気と雷でアミノ酸ができる」など
高温で岩だらけだった原始の地球で何が起こったのか?
約46億年前に地球ができてから数億年の間、地表はほぼ確実に高温で、彗星や小惑星の衝突も激しかったため、いかなる生命体も生息できない環境にあった。だが、約10億年後には、生命が誕生しただけでなく、微生物マット(微生物がマット状にかたまって増殖した状態)の化石という形で痕跡を残すまでになっていた。 ギャラリー:地球45億年 奇跡を旅する 写真13点 その間に一体何が起こったのか? 5億年かそこらの間に、生命はどのようにして無生物から誕生したのだろうか。これまでに提唱された3つの主な理論を紹介しよう。
1. 大気から雷によって生まれた
生命が誕生した当時の大気は、現在とは大きく異なっていたと、米ハワード大学化学科の学科長で、『創造の大まかな歴史:科学と生命の起源の探求(A Brief History of Creation: Science and the Search for the Origin of Life)』の共著者であるジム・クリーブス氏は指摘する。 1950年代に、ノーベル賞を受賞した化学者ハロルド・ユーリーは、太陽系のほとんどの大気の主な成分は、窒素とメタンである点に注目した。ユーリーは、初期の地球も同様であり、生命によって酸素がより豊富な大気に変化したと推論した。また、ユーリーは初期の大気は「生命の前駆体となりうる有機化合物を非常に効率的に作り出せる」と提唱した。 ユーリーは自身の研究生であるスタンリー・ミラーに、この理論を検証する実験を行うよう指示した。後にユーリー・ミラーの実験として知られるようになるこの実験では、閉鎖された環境の中で水を加熱しつつ、水素、メタン、アンモニア、水蒸気が混じった気体に雷のように電気を流し、冷却して雨のように水に戻した。 結果は驚くべきものだった。 1週間もしないうちに、実験で再現された「海」は赤茶色に変わった。生命の構成要素であるアミノ酸を作ったからだ。 その後の研究により、地球の初期の大気組成はミラーが実験で作ったものとはやや異なり、主な成分は窒素と二酸化炭素で、水素やメタンは少ししかなかったことが分かった。 しかし、ミラーが提唱した化学反応の原理は今でも概ね正しい。雷が小惑星の衝突や太陽からの紫外線と合わさると、シアン化水素が生成され、それが地殻から水によって汲み上げられた鉄と反応し、糖などの物質を形成したのだ。これらの物質が結合してリボ核酸(RNA)の鎖ができたかもしれない(RNAを構成するリボースは糖の一種)。RNAは情報を保持する役割を持ち、生命の重要な構成要素だ。ある時点でRNAが自己複製を始め、生命が誕生したかもしれない。 これらのRNA分子は、どのようにして保護膜に囲まれた複雑な細胞構造に進化したのだろうか。 その鍵は「コアセルベート」かもしれない。コアセルベートとは、タンパク質と核酸を含む小さな液滴で、膜がなくても細胞と同じように中の物質を結び付けられる。複数の研究者が、コアセルベートは初期のRNAやその他の有機物を濃縮する原細胞として機能していたと仮説を立てている。